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レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘) Part2

652 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:53:41.97 0
>>575-578,>>613-620つづきです
保全感謝です!


衣梨奈は帰ってくるなり、絵里のベッドにダイブした。
まだ心臓の声はハッキリと聞こえている。あれから時間も経ってっているというのに、まだ収まらない。
ぎゅうと締め付けられるような痛みが胸に走る。
衣梨奈は体を丸め、自分を守るように両腕で抱きしめる。

そっと唇を指でなぞる。
「あひる口」と評される絵里の唇は柔らかかった。
この唇に、れいなのキスが落とされた数時間前のことを、衣梨奈はぼんやりと思い出す。

653 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:54:20.91 0
キスされた瞬間、頭の中には聖が浮かんだ。
だけど、れいなの甘い唇を拒むことはできなかった。

「っ……」

合わせるだけの口付けに、衣梨奈は顔を赤く染める。
れいなも自分から仕掛けておいて恥ずかしいのか、視線を外し、ココアを一口飲んだ。
鼓動が速くなる。呼吸が短くなる。顔が紅潮する。
一瞬だけ、衣梨奈の中に、絵里の寂しい笑顔がよぎった。
衣梨奈はぎゅうと胸が締め付けられ、勢いよく立ち上がった。

「絵里……」

後方かられいなの声が追ってくる。
それと同時に、衣梨奈はふわりと温もりに包まれる。
背中越しにれいなの体温を感じ、再び鼓動が速くなる。
拒むことができない。聖が、絵里が、頭の中には彼女たちの笑顔が浮かぶのに、衣梨奈は、拒めない。

654 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:54:45.40 0
「肌…だいじょうぶやと?」

耳元で囁かれた甘い言葉に衣梨奈はドキッとする。
動揺を悟られないようにしながらも、「少しずつだけど……だいじょうぶ」と必死に返す。
その言葉にれいなは幾分か安心したのか「そっか」と呟き、衣梨奈から離れた。
傍にあった温もりがなくなり、衣梨奈は不意に寂しくなるが、そんな考えを打ち消すように頭を振る。

振り返ると、れいなの優しい表情がそこにあった。
れいなは大きい瞳で真っ直ぐに衣梨奈を見つめる。優しくて甘いその視線に、衣梨奈は捉えられる。
彼女が見ているのは絵里であるにもかかわらず、衣梨奈はその心までも、れいなに捉えられてしまいそうな気がする。

「戻ろっか。みんな待っとぉし」

れいなはそうしてニシシと笑うと、衣梨奈の置いたコーンポタージュを彼女に渡す。
衣梨奈も素直にそれを受け取り、れいなの歩く背中を追いかける。
なにかをれいなに言うべきであったのに、衣梨奈はなにも言えそうになかった。

655 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:55:47.80 0
衣梨奈は事務所の部屋へ戻っても、真っ直ぐに絵里の顔を見ることはできなかった。
絵里には「先に帰ります」とメールを送信した後、逃げるようにその場から離れ、帰宅した。
ベッドの上で、衣梨奈は携帯電話を取り出して受信ボックスを確認するが、新着メールは届いていなかった。
なんとなく、もう、絵里にはバレているような気がした。
衣梨奈が、絵里の最愛の人であるれいなと、キスを交わしたこと―――

分かっている。
キスをしたのはれいなの方だった。
それは衣梨奈のせいではないことだし、もちろん絵里のせいでもない。
拒めないことも、拒むことができなかったことも、分かっている。
それは絵里だって、分かってくれるはずだと、衣梨奈は頭では理解していた。

それでも、それでも衣梨奈の胸は締め付けられた。
静かな湖に、ひとつの石が放り投げられ、同心円上に波紋が広がる。
小さな波紋は確かな力を持って広がり続け、衣梨奈の心を支配し、揺るがす。

そのとき、衣梨奈の頭に聖が浮かんだ。
れいなにキスされた瞬間にもそこにいた彼女は、相変わらず優しい笑顔を衣梨奈に向けていた。
聖は右手をこちらに差し出している。まるで、「行こうよ」と言っているようで、衣梨奈はその手を掴みたかった。
だが、衣梨奈はその手を伸ばすことができず、ただ心の中で、彼女の名を呼ぶだけだった。

ああ、そうか、と衣梨奈は唐突に想う。

この感情を、きっと、「好き」と呼ぶのかもしれない。

656 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:56:18.69 0
衣梨奈にとって、大切な人。
同期であるとか、年が近いとか、よく遊ぶとか、それだけでは足りない、この気持ち。
胸の中に確かに存在し、時折痛みを伴って主張したそれは、結局のところ、単純なるひとつの“想い”なのかもしれない。


―えりぽんにも、そういう人、できるのかもしれないね


絵里にとって、れいなとはそういう存在なのだと、衣梨奈は理解した。
だから衣梨奈は、その瞳から流れた涙の理由を、ようやく知った。

657 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:56:47.30 0
衣梨奈はそっと涙を拭いながら、絵里のことを考えた。
れいなに逢えない時間、絵里はどんな気持ちで此処に居たのだろう。
大切な人が前に進んでいくことを、絵里は寂しそうに見ていたのだろうか。

衣梨奈と入れ替わり、絵里は再びれいなと同じ場所に立っていた。
だけど、それはあくまでも「生田衣梨奈」としてであり、決して「亀井絵里」としてではなかった。
こんなに傍にいるのに、こんなに近くにいるのに、絵里は絵里であることをだれにも話すことは叶わなかった。

最愛の人であるれいなにさえ、絵里はずっと、嘘をつき続けていた。

絵里は、どんな気持ちで、あの場所にいるのだろうか。

658 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:57:08.54 0
衣梨奈はそっと上体を起こし、携帯電話を見つめた。
まだ返信はないが、衣梨奈はベッドから降り、シャワーを浴びようと思った。

絵里と入れ替わったときに交わしたいくつかの約束。
必ずお風呂には日を跨ぐ前に入ること、というのもその約束のひとつだった。

―絵里の体、そんなに綺麗じゃないから、引かないでね

絵里と入れ替わって最初に迎えた朝、衣梨奈は絵里の声を聞いた。
どれほどの痛みを持ってその言葉を伝えたかくらい、衣梨奈にでも分かる。
だから、衣梨奈は約束を守ろうと思っていた。
いまもまだ、ずっと闘っている、絵里のために。

衣梨奈は替えのシャツを持って、風呂場へと歩いた。
どうか、どうか、と、ただ意味もなく、衣梨奈はだれかに祈った。
この入れ替えを行ったのが「かみさま」であるのなら、こんな皮肉なことはないなと、苦笑した。

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