スレ大杉なんで2chブラウザ推奨

これ参考にがんばって!!1 → 板追加手順

■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 最新50


レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘) Part2

613 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:31:58.49 0
>>575-578つづき

メンバーが帰り支度をしているときに、彼女は現れた。
亀井絵里の外見をしている生田衣梨奈は「どーもー」と芸人のような挨拶をして部屋に入ってきた。
突然の訪問者に全員が呆気にとられていると、真っ先に反応したのは道重さゆみだった。

「あー、絵里。久しぶりじゃーん」

さゆみの言葉を皮切りに、部屋は一気に騒がしくなった。

「カメぇ、久しぶりぃ!」
「亀井さん、元気してましたか?」

絵里と活動期間を同じくしていた先輩メンバーがドアに集まる。
衣梨奈は久しぶりの先輩たちに嬉しそうに話をしている。
その様子を見ると、なんだか自分までも嬉しくなり、絵里は自然と優しい笑顔になった。

「どどどど、どーしよぉ……」

ふと、隣にいた譜久村聖の手が震え始めた。
絵里はきょとんとしながら彼女を見ると、聖は慌ただしく手を動かし、視線を衣梨奈、外見は絵里である衣梨奈から外した。

「どしたと、聖?」
「だ、だ、だって、か、亀井さんが」

そうして聖は衣梨奈の腕をギュッと掴む。
絵里はそこで、聖は絵里の大ファンらしいという話を思い出した。
尊敬されることや「好きです」と言われることは正直に嬉しい。
だが、自分がそういう対象になる理由が絵里にはいまひとつ理解できず、困ったように頭をかく。

614 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:32:39.51 0
此処で絵里が「あなたが手を掴んでいるのが絵里ですよー」なんてからかえば、彼女は卒倒するかもしれないなと苦笑した。
絵里は、まずはからかう前に、聖を衣梨奈と話させたかった。
衣梨奈だって、久しぶりの同期と話したいだろうし、聖だって、外見だけではあるが、尊敬する先輩と会いたいはずだ。

「じゃ、衣梨奈と挨拶行こうよ」
「え、で、でも」
「亀井さん先輩やん。挨拶せんのは失礼やろ?」

その証拠に、同じく9期メンバーの鞘師里保と鈴木香音は既に衣梨奈の元へ行き、頭を下げていた。
衣梨奈は同期の声を聞けて嬉しいのか、子どものようにはしゃいでいる。
絵里は聖を立たせ、「ほら、行くっちゃよ」と声をかける。
聖も絵里に促され、視線を下げながらもそっと立ち上がった。
これは相当、好きなんだろうなと絵里は照れくさくなり、衣梨奈の元へと歩いた。

「亀井さん、こんにちは」
「あ、あの……」

恥ずかしがりながらも聖が顔を上げ、衣梨奈と目を合わせた。
瞬間、衣梨奈の瞳が輝いた。
あ、と思ったときにはもう遅かった。

「聖、久しぶりっちゃー!」

衣梨奈は同期でも特に仲の良い聖に会えたことで油断した。
両腕を広げ、聖をぎゅうと包み込み、嬉しそうに声を上げた。しかも、博多弁で。
絵里はあちゃーと思うが、もうどうすることもできなかった。
聖は口をパクパクさせ、現状を理解しようと必死だった。たぶん、たったのひとつも理解できていないのだろうけど。
衣梨奈はそんなことお構いなしに聖を強く抱きしめる。

615 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:33:07.62 0
「いいなーフクちゃん、さゆみも絵里に抱きつきたいのー」

そうしてさゆみは楽しそうに笑うが、衣梨奈はそんなこと聞いちゃいない。
どうやら博多弁のことはバレていないようだと絵里はホッとするが、そろそろどうにかしなきゃなと思う。
聖は急に抱きしめられた嬉しさと、憧れの存在である絵里を目の前にした緊張が入り混じり、思考がショートしそうだった。

―どうやって助けたらいーのよ…

絵里は困ったように頬をかき、ふと視線を後方に向けると、そこには田中れいながいた。
れいなは聖に抱きついている衣梨奈を黙って見つめ、苦笑しながらも首の後ろをかいている。

相変わらずだなと、絵里は思う。
れいなは自分の気持ちに素直なのだが、それを表出することが時々苦手になることがあった。
特に、絵里のことになると、れいなは途端に弱気になる。
それが無性に可愛くもあるが、「へたれ」だとも、思う。
いまも、事務所に遊びに来た絵里に真っ先に話したいのだろうに、れいなはそこで躊躇した。
結果、話しかけるタイミングを逃し、後輩の聖に抱きついている絵里を見るという構図に陥っている。

616 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:33:27.98 0
そのとき、れいなは絵里の視線に気づいたのか、絵里と目を合わせた。
絵里は慌てて視線を衣梨奈へと戻すと、後方から「絵里」と呼ぶ声がした。
自分が呼ばれたのではないかと勘違いするようなその優しい声に、絵里は思わず振り返りたくなったが、ぐっと堪える。
久しぶりに聞いた、れいなの呼ぶ「絵里」という名前の響きが、絵里の心を締め付け、そしてどうしようもなく、優しくさせた。

絵里が視線を衣梨奈へ向けると、衣梨奈もようやく気付いたのか、聖からそっと体を離した。
聖はといえば、顔を真っ赤にさせなにか言おうとしているが言葉にはならない。放心状態とはこういうことを言うのだろうかと絵里は少しだけ、不安になった。

「久しぶり、絵里」

れいなはそうしてニコッと笑い、右手を軽く上げた。

「うん、久しぶり…」

衣梨奈もそれに応えるように右手を上げる。
昨夜の一件があったせいか、衣梨奈はれいなを意識しているようにも見えた。
不自然ではないが、だいじょうぶだろうかと絵里がハラハラすると、れいなは衣梨奈に近づき、「ちょっと水買ってくるけん」と言った。
それだけ残すとれいなは廊下を歩き、自販機のある休憩スペースへと向かった。
本当に、相変わらずだなと絵里が思っていると、衣梨奈もなにか感じ取ったのか、れいなの背中を追った。

「あー、絵里行っちゃったぁ。さゆみももう少し話したかったのに」

そうしてさゆみが言うのを聞きながら、このうさぎも相変わらずだなと、絵里は思った。

617 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:33:58.94 0
自販機の前に立ち、れいなはなにを買うかを悩んでいるようだった。
衣梨奈はなんて話そうと考えながら、すぐ傍にあった椅子に座り、その背中を見つめる。

ふと、昨日の絵里との話が頭をよぎった。
れいなは絵里にとって大切な存在。恐らく絵里も、れいなにとって大切な存在。
お互いがお互いを必要としたから、ふたりは同じ時間を共有している。

―えりぽんにも、そういう人、できるのかもしれないね

衣梨奈にとって、大切な人。
同期であるならば、譜久村聖が真っ先に思い浮かぶ。
年齢も近いし、話も合う。遊びに行く回数も、多い。聖は優しいし、可愛いと思う。
でも、それだけでは足りない感情が、此処にある。
久しぶりに聖に会ったとき、衣梨奈は胸がぎゅうと締め付けられ、それを誤魔化すように強く抱きしめた。
たったの数週間会っていないだけなのに、言いようのない感情が湧き上がり、傍に居たいと、ただなんとなく、思った。

絵里にとって、れいなとはそういう存在なのだろうか。

618 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:34:22.79 0
「ほい」

いつの間にか、れいなは衣梨奈の横に座っていた。
れいなは衣梨奈の前にコーンポタージュの缶を差し出し、「好きやろ?」と返した。

「あ、お金…」
「いらんわ、アホ。久しぶりやし、奢り」

れいなはそうして「ニシシ」と笑い、自分の手に持っていたホットココアを開けた。
猫舌なのか、ふーふーとなんどか冷ますように息を吹きかける姿に、衣梨奈は思わずドキッとした。
衣梨奈もれいなに倣い、プルトップを開け、口をつける。ゴロッとコーンが口内に転がってきた。

「元気、しよった?」

空気を震わせたれいなの言葉に、衣梨奈は顔を上げる。
れいなは両手で缶を持ち、視線は少し先の床へと向けられていた。

「うん…そこそこ」
「なんよ、そこそこて」

そうして笑うれいなは、優しかった。
ステージ上では真っ直ぐに想いを届けるように唄い、激しく踊るれいな。
高橋愛の卒業後、モーニング娘。のエースとしていっそうの自覚を持ち、自分を磨き続けてきたれいなの姿を、衣梨奈は知っている。
だが、いま、自分の横にいるれいなは、衣梨奈の見たことがない表情をしていた。
柔らかくて優しくて、だけどとても自然体な笑顔のれいなを見て、衣梨奈はなんとなく、思う。
ああ、亀井さんは、とても、愛されているんですね、と―――

619 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:35:12.36 0
「絵里…」

れいなは手にしていた缶を置き、そう呟いた。
衣梨奈がその声に気づき、顔を上げた瞬間だった。
れいなの両腕がそっと背中へと回され、一瞬にして温もりに包また。
肩越しに感じたれいなの甘い香りが鼻をくすぐる。

「っ……れいな…」

「田中さん」と呼びかけそうになったが、必死に堪えて、絵里がそう呼ぶように返した。
心臓が高鳴り、呼吸が浅くなっているのが分かる。
だが、衣梨奈はそれを悟られないように、そっとコーンポタージュの缶を床に置いた。

「逢いたかったっちゃん…」

耳元で囁かれた言葉に顔が紅潮する。
こんなに甘くて優しいれいなの声を、衣梨奈は聞いたことがなかった。
それがそのまま、れいなの絵里に対する愛情の深さだということも、分かった。

620 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:35:31.22 0
「絵里も……逢いたかったよ」

れいなの気持ちが、そして亀井絵里の気持ちが分かるから、衣梨奈は嘘をつきたくなかった。
此処にいるのは絵里ではなく衣梨奈だと。
田中さんの想っている亀井さんじゃないのだと、声を大にして言いたかった。
このまま嘘をつくことが、れいなを傷つけるのではないかと、衣梨奈は思った。

「絵里…」

だが、その嘘を突き通す以外、衣梨奈には方法がなかった。
甘くて切ない声に誘われたかのように顔を上げると、衣梨奈の唇は、そのままれいなと重なった。

心臓が高鳴った。
時が、止まった。
重なる唇は甘く、そして切なかった。

317KB
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

0ch BBS 2005-12-31