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レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘) Part2

1 :名無し募集中。。。:2012/01/01(日) 15:36:31.29 O
◇ふとしたはずみで生田衣梨奈と亀井絵里の身体が入れ替わってしまったことから巻き起こるストーリー 
 身体の入れ替わった二人とガキさんとの三角関係の行方は!?

【プロローグ】

|||9|^_ゝ^) <新垣さん聞いてください!ブックオフで新垣さんの写真集がすっごく安く売ってたんでコンプしました!
( ・e・)<な〜によそれ あたしの写真集が価値がないみたいじゃないの 「安く」は余計!「安く」は
|||9|^_ゝ^) <そんな事ないですよ えりなにとっては大好きな新垣さんのですもん
        価値ありありですよ 安くですけどちゃんとお金は払って買ったんですから
        お買い物上手って褒めてください あと写真集にサインしてもらって・・
♪〜トラワヨー プサンハンヘー アーイタイー
∩・e・)<はいもしもし おーっ!カメ〜 今夜?いいよ オッケー! んじゃね〜ハーイ・・ ポチットナ
|||9|#‘_ゝ‘)<亀井さんですか?
( ・e・)<えー?あん そーそー 
|||9|^_ゝ^) <あっそうだ 今度写真集全部持ってくるんでサインしてもらって・・
(・e・* )〜♪今夜はカ〜メが泊まりにくるから さっさと仕事をおわらすべ〜 ガキカメー!ってか
|||9|^_ゝ^) サイン・・

|||9|^_ゝ^) ・・

|||9|‘_ゝ‘) <いいなぁ〜亀井さんは・・ えりなも亀井さんになりたいなぁ・・

◇とまぁそういうこって この後えりりんと身体が入れ替わったナマタがガキさんと
 「ガキカメ〜」と言いながら肛門を広げたり広げなかったり
 ナマタと身体が入れ替わったえりりんがガキさんにホッペを
    _, ,_
  ( #・e・) <なんかムシャクシャするのだ
つ<;゜_ゝ゜>⊂ <痛たたたたたたた

ってされたりされなかったり・・

601 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 01:34:32.32 0
|||9|^_ゝ^)〜♪

602 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 04:01:45.32 i
保全

603 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 07:01:30.85 0
今日はどんな作品が読めるかな

604 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 09:12:47.38 0
    _, ,_
  ( #・e・) <おバカ認定はやめるのだ
つ<;゜_ゝ゜>⊂ <私が書いてるんじゃないですよう

605 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 10:41:38.95 0
なるほどえりりんがガキさんに教育されるわけだ

606 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 11:52:11.58 0
確かに中身が入れ替わってるからそうなるわなw

607 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 13:37:51.33 O
えりりんが教育されても違和感ないなぁw

608 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 15:21:02.16 0
>>578のつづき今夜あたり投下します

609 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 16:28:47.39 0
wktk

610 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 17:39:42.24 0
楽しみ

611 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 18:56:30.99 0
19:30くらいに投下します

612 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:03:46.28 0
正座して待ってる

613 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:31:58.49 0
>>575-578つづき

メンバーが帰り支度をしているときに、彼女は現れた。
亀井絵里の外見をしている生田衣梨奈は「どーもー」と芸人のような挨拶をして部屋に入ってきた。
突然の訪問者に全員が呆気にとられていると、真っ先に反応したのは道重さゆみだった。

「あー、絵里。久しぶりじゃーん」

さゆみの言葉を皮切りに、部屋は一気に騒がしくなった。

「カメぇ、久しぶりぃ!」
「亀井さん、元気してましたか?」

絵里と活動期間を同じくしていた先輩メンバーがドアに集まる。
衣梨奈は久しぶりの先輩たちに嬉しそうに話をしている。
その様子を見ると、なんだか自分までも嬉しくなり、絵里は自然と優しい笑顔になった。

「どどどど、どーしよぉ……」

ふと、隣にいた譜久村聖の手が震え始めた。
絵里はきょとんとしながら彼女を見ると、聖は慌ただしく手を動かし、視線を衣梨奈、外見は絵里である衣梨奈から外した。

「どしたと、聖?」
「だ、だ、だって、か、亀井さんが」

そうして聖は衣梨奈の腕をギュッと掴む。
絵里はそこで、聖は絵里の大ファンらしいという話を思い出した。
尊敬されることや「好きです」と言われることは正直に嬉しい。
だが、自分がそういう対象になる理由が絵里にはいまひとつ理解できず、困ったように頭をかく。

614 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:32:39.51 0
此処で絵里が「あなたが手を掴んでいるのが絵里ですよー」なんてからかえば、彼女は卒倒するかもしれないなと苦笑した。
絵里は、まずはからかう前に、聖を衣梨奈と話させたかった。
衣梨奈だって、久しぶりの同期と話したいだろうし、聖だって、外見だけではあるが、尊敬する先輩と会いたいはずだ。

「じゃ、衣梨奈と挨拶行こうよ」
「え、で、でも」
「亀井さん先輩やん。挨拶せんのは失礼やろ?」

その証拠に、同じく9期メンバーの鞘師里保と鈴木香音は既に衣梨奈の元へ行き、頭を下げていた。
衣梨奈は同期の声を聞けて嬉しいのか、子どものようにはしゃいでいる。
絵里は聖を立たせ、「ほら、行くっちゃよ」と声をかける。
聖も絵里に促され、視線を下げながらもそっと立ち上がった。
これは相当、好きなんだろうなと絵里は照れくさくなり、衣梨奈の元へと歩いた。

「亀井さん、こんにちは」
「あ、あの……」

恥ずかしがりながらも聖が顔を上げ、衣梨奈と目を合わせた。
瞬間、衣梨奈の瞳が輝いた。
あ、と思ったときにはもう遅かった。

「聖、久しぶりっちゃー!」

衣梨奈は同期でも特に仲の良い聖に会えたことで油断した。
両腕を広げ、聖をぎゅうと包み込み、嬉しそうに声を上げた。しかも、博多弁で。
絵里はあちゃーと思うが、もうどうすることもできなかった。
聖は口をパクパクさせ、現状を理解しようと必死だった。たぶん、たったのひとつも理解できていないのだろうけど。
衣梨奈はそんなことお構いなしに聖を強く抱きしめる。

615 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:33:07.62 0
「いいなーフクちゃん、さゆみも絵里に抱きつきたいのー」

そうしてさゆみは楽しそうに笑うが、衣梨奈はそんなこと聞いちゃいない。
どうやら博多弁のことはバレていないようだと絵里はホッとするが、そろそろどうにかしなきゃなと思う。
聖は急に抱きしめられた嬉しさと、憧れの存在である絵里を目の前にした緊張が入り混じり、思考がショートしそうだった。

―どうやって助けたらいーのよ…

絵里は困ったように頬をかき、ふと視線を後方に向けると、そこには田中れいながいた。
れいなは聖に抱きついている衣梨奈を黙って見つめ、苦笑しながらも首の後ろをかいている。

相変わらずだなと、絵里は思う。
れいなは自分の気持ちに素直なのだが、それを表出することが時々苦手になることがあった。
特に、絵里のことになると、れいなは途端に弱気になる。
それが無性に可愛くもあるが、「へたれ」だとも、思う。
いまも、事務所に遊びに来た絵里に真っ先に話したいのだろうに、れいなはそこで躊躇した。
結果、話しかけるタイミングを逃し、後輩の聖に抱きついている絵里を見るという構図に陥っている。

616 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:33:27.98 0
そのとき、れいなは絵里の視線に気づいたのか、絵里と目を合わせた。
絵里は慌てて視線を衣梨奈へと戻すと、後方から「絵里」と呼ぶ声がした。
自分が呼ばれたのではないかと勘違いするようなその優しい声に、絵里は思わず振り返りたくなったが、ぐっと堪える。
久しぶりに聞いた、れいなの呼ぶ「絵里」という名前の響きが、絵里の心を締め付け、そしてどうしようもなく、優しくさせた。

絵里が視線を衣梨奈へ向けると、衣梨奈もようやく気付いたのか、聖からそっと体を離した。
聖はといえば、顔を真っ赤にさせなにか言おうとしているが言葉にはならない。放心状態とはこういうことを言うのだろうかと絵里は少しだけ、不安になった。

「久しぶり、絵里」

れいなはそうしてニコッと笑い、右手を軽く上げた。

「うん、久しぶり…」

衣梨奈もそれに応えるように右手を上げる。
昨夜の一件があったせいか、衣梨奈はれいなを意識しているようにも見えた。
不自然ではないが、だいじょうぶだろうかと絵里がハラハラすると、れいなは衣梨奈に近づき、「ちょっと水買ってくるけん」と言った。
それだけ残すとれいなは廊下を歩き、自販機のある休憩スペースへと向かった。
本当に、相変わらずだなと絵里が思っていると、衣梨奈もなにか感じ取ったのか、れいなの背中を追った。

「あー、絵里行っちゃったぁ。さゆみももう少し話したかったのに」

そうしてさゆみが言うのを聞きながら、このうさぎも相変わらずだなと、絵里は思った。

617 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:33:58.94 0
自販機の前に立ち、れいなはなにを買うかを悩んでいるようだった。
衣梨奈はなんて話そうと考えながら、すぐ傍にあった椅子に座り、その背中を見つめる。

ふと、昨日の絵里との話が頭をよぎった。
れいなは絵里にとって大切な存在。恐らく絵里も、れいなにとって大切な存在。
お互いがお互いを必要としたから、ふたりは同じ時間を共有している。

―えりぽんにも、そういう人、できるのかもしれないね

衣梨奈にとって、大切な人。
同期であるならば、譜久村聖が真っ先に思い浮かぶ。
年齢も近いし、話も合う。遊びに行く回数も、多い。聖は優しいし、可愛いと思う。
でも、それだけでは足りない感情が、此処にある。
久しぶりに聖に会ったとき、衣梨奈は胸がぎゅうと締め付けられ、それを誤魔化すように強く抱きしめた。
たったの数週間会っていないだけなのに、言いようのない感情が湧き上がり、傍に居たいと、ただなんとなく、思った。

絵里にとって、れいなとはそういう存在なのだろうか。

618 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:34:22.79 0
「ほい」

いつの間にか、れいなは衣梨奈の横に座っていた。
れいなは衣梨奈の前にコーンポタージュの缶を差し出し、「好きやろ?」と返した。

「あ、お金…」
「いらんわ、アホ。久しぶりやし、奢り」

れいなはそうして「ニシシ」と笑い、自分の手に持っていたホットココアを開けた。
猫舌なのか、ふーふーとなんどか冷ますように息を吹きかける姿に、衣梨奈は思わずドキッとした。
衣梨奈もれいなに倣い、プルトップを開け、口をつける。ゴロッとコーンが口内に転がってきた。

「元気、しよった?」

空気を震わせたれいなの言葉に、衣梨奈は顔を上げる。
れいなは両手で缶を持ち、視線は少し先の床へと向けられていた。

「うん…そこそこ」
「なんよ、そこそこて」

そうして笑うれいなは、優しかった。
ステージ上では真っ直ぐに想いを届けるように唄い、激しく踊るれいな。
高橋愛の卒業後、モーニング娘。のエースとしていっそうの自覚を持ち、自分を磨き続けてきたれいなの姿を、衣梨奈は知っている。
だが、いま、自分の横にいるれいなは、衣梨奈の見たことがない表情をしていた。
柔らかくて優しくて、だけどとても自然体な笑顔のれいなを見て、衣梨奈はなんとなく、思う。
ああ、亀井さんは、とても、愛されているんですね、と―――

619 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:35:12.36 0
「絵里…」

れいなは手にしていた缶を置き、そう呟いた。
衣梨奈がその声に気づき、顔を上げた瞬間だった。
れいなの両腕がそっと背中へと回され、一瞬にして温もりに包また。
肩越しに感じたれいなの甘い香りが鼻をくすぐる。

「っ……れいな…」

「田中さん」と呼びかけそうになったが、必死に堪えて、絵里がそう呼ぶように返した。
心臓が高鳴り、呼吸が浅くなっているのが分かる。
だが、衣梨奈はそれを悟られないように、そっとコーンポタージュの缶を床に置いた。

「逢いたかったっちゃん…」

耳元で囁かれた言葉に顔が紅潮する。
こんなに甘くて優しいれいなの声を、衣梨奈は聞いたことがなかった。
それがそのまま、れいなの絵里に対する愛情の深さだということも、分かった。

620 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:35:31.22 0
「絵里も……逢いたかったよ」

れいなの気持ちが、そして亀井絵里の気持ちが分かるから、衣梨奈は嘘をつきたくなかった。
此処にいるのは絵里ではなく衣梨奈だと。
田中さんの想っている亀井さんじゃないのだと、声を大にして言いたかった。
このまま嘘をつくことが、れいなを傷つけるのではないかと、衣梨奈は思った。

「絵里…」

だが、その嘘を突き通す以外、衣梨奈には方法がなかった。
甘くて切ない声に誘われたかのように顔を上げると、衣梨奈の唇は、そのままれいなと重なった。

心臓が高鳴った。
時が、止まった。
重なる唇は甘く、そして切なかった。

621 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:35:33.66 0
支援

622 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:36:18.99 0
正座して待っていただけるほどではないですが此処までです
次回が早くも最終回かもw

623 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 19:37:35.28 0
おおー!おつおつ!

624 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 20:09:41.10 i
うおー!いいね!いいね!
れなえり大好きやわ

625 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 20:42:16.03 O
次が最終回だと?
どうまとめるんだよ作家さん!

626 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 21:34:43.79 O
甘くてなんか切ないな…


627 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 22:37:50.89 0
乙!!

628 :名無し募集中。。。:2012/01/18(水) 22:44:38.48 0
やばい
これはいい、とてもいい

629 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 00:08:04.50 0
ホントは生ガキで書こうと思ったんですがちょっと路線変更しました
本編でもガキさんの出番が少ないですがちゃんと書きますので…w

明日か明後日には>>620のつづきあげます
れなえり良いよれなえりw

630 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 00:24:36.92 0
そういえばスレ立てした>>1的には生ガキ希望だったんだよなw
正統派さんのれなえり生ガキどれでも待ってる
ワッフルワッフル

631 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 00:25:02.40 0
ノリノリだなw
まったり待ってるぜ

632 :1:2012/01/19(木) 01:08:04.94 0
>>630
好きにやっちくり

633 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 01:16:12.94 0
乙です
れなえりめっちゃ良かった
やっぱり他の人の書いたの読むほうが自分で書くより楽しめるね

634 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 01:27:20.59 0
つまんない糞スレ

635 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 01:31:49.55 0
>>633
あなたのも待ってますよw

636 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 02:54:21.55 0
wkwk

637 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 03:40:47.21 O
>>629
おつです!
これは続きが気になるなー…
感想書くの苦手だから書き込み少ないけど全部読んでるから頑張って!

638 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 05:53:43.30 0
久々にきたがれなえり編が面白いな

639 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 06:20:05.92 0
糞スレ

640 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 06:50:39.43 0
>>2のまとめサイトにアクセスできない…

641 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 07:57:46.71 0
ん?繋がるけど・・・

642 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 10:05:49.05 0
期待保全

643 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 11:25:26.62 O
れなえり編楽しみだ
ワッフルワッフル

644 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 13:53:10.69 O
れなえりと来れば…ゴクッ
パ、パンツ脱いで待ってます

645 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 16:40:58.36 O
待機待機w

646 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 18:56:27.62 0
更新まち

647 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 20:39:25.06 O
>>644
風邪引くなよーw

648 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 21:41:59.18 O
れなまえり

649 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 22:12:49.81 0
>>648
語呂悪いw

650 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 22:27:49.02 0
>>620のつづきですが今夜は難しいかも…日を跨いで明日になるかもしれません


651 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 22:54:49.74 O
>>650
のんびり保全しつつ待ってるよ

652 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:53:41.97 0
>>575-578,>>613-620つづきです
保全感謝です!


衣梨奈は帰ってくるなり、絵里のベッドにダイブした。
まだ心臓の声はハッキリと聞こえている。あれから時間も経ってっているというのに、まだ収まらない。
ぎゅうと締め付けられるような痛みが胸に走る。
衣梨奈は体を丸め、自分を守るように両腕で抱きしめる。

そっと唇を指でなぞる。
「あひる口」と評される絵里の唇は柔らかかった。
この唇に、れいなのキスが落とされた数時間前のことを、衣梨奈はぼんやりと思い出す。

653 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:54:20.91 0
キスされた瞬間、頭の中には聖が浮かんだ。
だけど、れいなの甘い唇を拒むことはできなかった。

「っ……」

合わせるだけの口付けに、衣梨奈は顔を赤く染める。
れいなも自分から仕掛けておいて恥ずかしいのか、視線を外し、ココアを一口飲んだ。
鼓動が速くなる。呼吸が短くなる。顔が紅潮する。
一瞬だけ、衣梨奈の中に、絵里の寂しい笑顔がよぎった。
衣梨奈はぎゅうと胸が締め付けられ、勢いよく立ち上がった。

「絵里……」

後方かられいなの声が追ってくる。
それと同時に、衣梨奈はふわりと温もりに包まれる。
背中越しにれいなの体温を感じ、再び鼓動が速くなる。
拒むことができない。聖が、絵里が、頭の中には彼女たちの笑顔が浮かぶのに、衣梨奈は、拒めない。

654 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:54:45.40 0
「肌…だいじょうぶやと?」

耳元で囁かれた甘い言葉に衣梨奈はドキッとする。
動揺を悟られないようにしながらも、「少しずつだけど……だいじょうぶ」と必死に返す。
その言葉にれいなは幾分か安心したのか「そっか」と呟き、衣梨奈から離れた。
傍にあった温もりがなくなり、衣梨奈は不意に寂しくなるが、そんな考えを打ち消すように頭を振る。

振り返ると、れいなの優しい表情がそこにあった。
れいなは大きい瞳で真っ直ぐに衣梨奈を見つめる。優しくて甘いその視線に、衣梨奈は捉えられる。
彼女が見ているのは絵里であるにもかかわらず、衣梨奈はその心までも、れいなに捉えられてしまいそうな気がする。

「戻ろっか。みんな待っとぉし」

れいなはそうしてニシシと笑うと、衣梨奈の置いたコーンポタージュを彼女に渡す。
衣梨奈も素直にそれを受け取り、れいなの歩く背中を追いかける。
なにかをれいなに言うべきであったのに、衣梨奈はなにも言えそうになかった。

655 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:55:47.80 0
衣梨奈は事務所の部屋へ戻っても、真っ直ぐに絵里の顔を見ることはできなかった。
絵里には「先に帰ります」とメールを送信した後、逃げるようにその場から離れ、帰宅した。
ベッドの上で、衣梨奈は携帯電話を取り出して受信ボックスを確認するが、新着メールは届いていなかった。
なんとなく、もう、絵里にはバレているような気がした。
衣梨奈が、絵里の最愛の人であるれいなと、キスを交わしたこと―――

分かっている。
キスをしたのはれいなの方だった。
それは衣梨奈のせいではないことだし、もちろん絵里のせいでもない。
拒めないことも、拒むことができなかったことも、分かっている。
それは絵里だって、分かってくれるはずだと、衣梨奈は頭では理解していた。

それでも、それでも衣梨奈の胸は締め付けられた。
静かな湖に、ひとつの石が放り投げられ、同心円上に波紋が広がる。
小さな波紋は確かな力を持って広がり続け、衣梨奈の心を支配し、揺るがす。

そのとき、衣梨奈の頭に聖が浮かんだ。
れいなにキスされた瞬間にもそこにいた彼女は、相変わらず優しい笑顔を衣梨奈に向けていた。
聖は右手をこちらに差し出している。まるで、「行こうよ」と言っているようで、衣梨奈はその手を掴みたかった。
だが、衣梨奈はその手を伸ばすことができず、ただ心の中で、彼女の名を呼ぶだけだった。

ああ、そうか、と衣梨奈は唐突に想う。

この感情を、きっと、「好き」と呼ぶのかもしれない。

656 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:56:18.69 0
衣梨奈にとって、大切な人。
同期であるとか、年が近いとか、よく遊ぶとか、それだけでは足りない、この気持ち。
胸の中に確かに存在し、時折痛みを伴って主張したそれは、結局のところ、単純なるひとつの“想い”なのかもしれない。


―えりぽんにも、そういう人、できるのかもしれないね


絵里にとって、れいなとはそういう存在なのだと、衣梨奈は理解した。
だから衣梨奈は、その瞳から流れた涙の理由を、ようやく知った。

657 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:56:47.30 0
衣梨奈はそっと涙を拭いながら、絵里のことを考えた。
れいなに逢えない時間、絵里はどんな気持ちで此処に居たのだろう。
大切な人が前に進んでいくことを、絵里は寂しそうに見ていたのだろうか。

衣梨奈と入れ替わり、絵里は再びれいなと同じ場所に立っていた。
だけど、それはあくまでも「生田衣梨奈」としてであり、決して「亀井絵里」としてではなかった。
こんなに傍にいるのに、こんなに近くにいるのに、絵里は絵里であることをだれにも話すことは叶わなかった。

最愛の人であるれいなにさえ、絵里はずっと、嘘をつき続けていた。

絵里は、どんな気持ちで、あの場所にいるのだろうか。

658 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:57:08.54 0
衣梨奈はそっと上体を起こし、携帯電話を見つめた。
まだ返信はないが、衣梨奈はベッドから降り、シャワーを浴びようと思った。

絵里と入れ替わったときに交わしたいくつかの約束。
必ずお風呂には日を跨ぐ前に入ること、というのもその約束のひとつだった。

―絵里の体、そんなに綺麗じゃないから、引かないでね

絵里と入れ替わって最初に迎えた朝、衣梨奈は絵里の声を聞いた。
どれほどの痛みを持ってその言葉を伝えたかくらい、衣梨奈にでも分かる。
だから、衣梨奈は約束を守ろうと思っていた。
いまもまだ、ずっと闘っている、絵里のために。

衣梨奈は替えのシャツを持って、風呂場へと歩いた。
どうか、どうか、と、ただ意味もなく、衣梨奈はだれかに祈った。
この入れ替えを行ったのが「かみさま」であるのなら、こんな皮肉なことはないなと、苦笑した。

659 :名無し募集中。。。:2012/01/19(木) 23:57:53.30 0
第3話ここまでになります
最終回のつもりで書いてたら意外と長くなったのでつづきはまた投下します

660 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 00:01:18.50 0
おつおつー!せつないよおお!いいよいいよー

661 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 00:10:52.72 O
なんとかしたげてよ。+゚(つд`)゚+。

662 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 00:59:26.55 0
優しく名前を呼ぶ声。温かい手のひら。からかう笑顔。
会わなくなって久しいのに、全てが鮮明に浮かんでくる。
会いたい。それ以外に言葉が出てこないほど。

絵里の姿をした衣梨奈はこっそりと事務所に忍び込んだ。元々所属していた事務所だから、入ることは簡単である。
でも、それまでは滅多に顔を出さなかったのに、いきなり頻繁に訪れるというのは不自然だ。
だから、衣梨奈は入れ替わってからはずっと自宅で過ごし、
絵里から教わった、ダンスや学校での勉強の自主練習を繰り返す日々を送っていた。
とりあえずまたゆっくり遊びに来るとして、今日は顔を見たらすぐに帰ろう。
そうっと、みんなが待つ楽屋に近づく。出入りする瞬間を見られたらそれでいい。
廊下の角に立って、楽屋の扉をじっと見つめる。なんだかスパイにでもなった気分。
思わず頬が緩んだ瞬間、後ろから声をかけられた。

「・・・カメ?」

低く落ち着いた、大好きな声。その声が呼ぶのは自分の名前じゃなかったけど、それでも良かった。
慌てて振り返ると、世界で一番会いたかったその人は、驚いた表情で立っていた。

「へへ、カメ・・・です」

なんだかまっすぐ目を見つめられなくて、うつむきながら返事を返す。
すると、体に柔らかい衝撃。同時に、ふわっと、里沙の香りがした。

663 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 00:59:49.45 0
「に・・・が、ガキさん?」

抱きつかれていた。突然のことで何が何だか分からない。
今まで、こんな風に抱きつかれたことなんてない。感じたことの無い距離感に、戸惑いや嬉しさが入りまじる。

「くるならくるって連絡してよ・・・」

里沙は、衣梨奈の肩に顔を預け、つぶやいた。
聞いたことのない甘えた声音。衣梨奈は驚くよりもまず、自分には見せない姿を引き出せる絵里に嫉妬した。
新垣さんはいつも、亀井さんの前ではこうなのかな。亀井さん、だけなのかな。
心がどんどんモヤモヤに包まれていく。会えたことの嬉しさも、すぐにかき消えて行った。
胸を支配する痛みを吹っ切るように、衣梨奈は里沙の背中に腕を回した。
こんなに、華奢だとは知らなかった。それが、言いようもなく悔しかった。
悔しさの分だけ強く抱き締めた。それでも嫌がらない新垣さんを、少しだけ、嫌いになった。

664 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 01:00:52.52 0
終わり

665 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 01:13:31.32 0
生ガキキター!
こういうの好き〜めっちゃツボだわ〜

666 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 01:59:36.92 O
生ガキいい!


667 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 02:08:36.61 0
実は意外と少なかった生ガキおつ!
たまにでも良いのでまた書いてくれると嬉しいです!

668 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 05:51:46.19 O
衣梨奈のヤキモチが良いな

669 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 06:21:24.89 0
パクり小説かよ通報しとくな

670 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 08:10:15.56 0
ややヤキモチなんて焼いてないっちゃ

 ノノノハヽ プクー    _, ._
ノノl9|*‘_ゝ) ∬∬    (・e・* )
  (  つ=.__Ω__    ∪ ∪ )
 ⊂_)_) [ニニニ]   (__(_つ
       | o |
          ̄ ̄

671 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 10:20:59.58 0
ー^)

672 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 11:27:13.74 0
生ガキいいわー
正統派さんがれなえりとPONPONにしてくれたことに感動

673 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 14:10:11.04 0
それはどういう意味で?

674 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 15:27:13.05 0

      生ノハヾヽ      ウヘヘェ
      从*^ー^)       〃ノハヾヽ 
      / ∪ ∪       |||9|^_ゝ^) 
      し'⌒∪        / ∪ ∪
                  し'⌒∪


675 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 17:32:04.45 0


676 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 18:53:04.09 0
良スレあげ

677 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 19:04:35.91 0
なんかココってお得感満載のスレだなw

678 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 19:17:54.44 0
昨夜のハロタイの春ビューの話題が出た時のフクちゃんがもうw
どんだけ頷くんだって そこまでカメ好きか
初めてフクちゃんを可愛いと思った

679 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 20:22:58.64 0
>>678

以前フクがうさちゃんピースにゲストとして来た時も亀井への愛の暴走トークが凄かったよな

680 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 21:10:21.30 0
>>678-679
話には聞いてたけど
あんなにフクちゃんがカメ好きとは知らなかったです…

あとで>>658のつづきあげます

681 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:18:04.47 0
>>575-578,>>613-620,>>652-658つづき 最終話です


絵里は自動販売機の前にある椅子に座り、ぼんやりと床を眺めた。
メンバーが帰り、どれくらいの時間が経ったのかなど、もう覚えていないが、そろそろ帰らないと明日の仕事に支障が出ることは分かっていた。
用事があって残っているわけではなかった。だが、絵里はなんとなく、その場から動けなかった。
いや、なんとなく、ではない。心の奥に微かに過ぎった不安が、いつのまにか明確な形を成して絵里を包み込んでいた。

部屋に戻ってきたときの衣梨奈とれいなの表情。
それを見た瞬間、絵里の心は悲鳴を上げた。
もう、分かっていた。れいなと何年付き合ってきたと思っているんだと自分で苦笑する。
分かっていたことなのに、頭で理解できていることなのに、心が、泣いた。

どうして、とも、なんで、とも言えない。
言ってしまえば、衣梨奈を困らせてしまうことくらい、分かっている。絵里だってもう、子どもじゃない。
悪くない。衣梨奈に非なんてひとつもない。

それなのに、それなのに、それなのに、それだからこそ。

れいながキスした人は私じゃないと、言いたかった。
れいなの瞳に映っているのは絵里じゃないと、叫びたかった。

それは無意味だって、随分な身勝手だって、分かっていたのに。

682 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:18:55.50 0
「おー、生田ぁ」

急に追ってきた声に絵里はドキッとする。
もう、見なくても声の相手はだれか分かっている。最も逢いたくて、最も逢いたくなかったその人だったが、絵里は顔を上げた。
果たしてそこにはれいながいた。大きめのサングラスをかけ、ニシシと笑って八重歯を見せるれいなに、絵里はどうしようもなく、安心した。

「なんしよーと?」

ある程度は予想していた質問だったが、なんと答えて良いか分からなくなり、絵里は咄嗟に「……休憩?」と答えた。

「なんで疑問形やっちゃん」

そうしてれいなはサングラスを外し、困ったように笑う。
絵里が卒業してもう1年も経つが、その間にれいなは変わったと思う。
昔はもっと、とげとげしていて、捻くれていて、それでいてガラスのような存在だった。
だが、いまのれいなは、良い意味で尖っているが、基本的には優しくなった。
9期メンバーの加入や愛の卒業があったからか、れいなは随分と優しく、笑うようになった。

「田中さんは…」
「んー、ああ、忘れ物しとってさ。明日でも良かったっちゃけん、やっぱ寒いけん取りに来たと」

そうしてれいなは首に巻いていた白いマフラーを手で振って見せた。
こんな寒い日にマフラーを事務所に忘れるなんて、どこか抜けているなあと絵里は苦笑した。

683 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:19:41.98 0
「なんか飲む?」
「え?」
「外寒いけん、奢っちゃるよ」

絵里が遠慮しようとする間もなく、れいなはカバンの中から財布を取り出していた。
鼻歌交じりにれいなは財布を開けた。「さっきはココアやったしなー」と呟きながら、どれにしようかと自販機を見つめる。

「生田、どれ?」

ちょっと強めに聞かれ、絵里はドキッとする。
こういう少しだけ強引なところも相変わらずだなと思いながら、絵里は「じゃあ、コンポタで」と言った。
れいなは絵里の答えに一瞬だけ眉を上げる。絵里はそんなれいなの態度に「え?」と返すと、れいなは「いや…」と自販機に向き直った。
硬貨を投入し、ボタンを押すと、派手な音を立てて缶が落ちてくる。
静かな廊下によく響くなと思っていると、「ほい」という声とともに、コーンポタージュが放物線を描き、絵里の前に飛んできた。
絵里が慌ててキャッチすると、投げた本人であるれいなは「ナイスキャッチ」と笑い、再び自販機を見つめた。

れいなからもらったコーンポタージュの缶は、とても温かい。
それはむしろ熱いくらいで、なんだか火傷しそうになったが、絵里はその缶から手を離せなかった。
再び派手な音が廊下に響いたかと思うと、れいなは絵里の横にひょいと座った。彼女の手には紅茶が握られている。

684 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:20:21.99 0
「生田さぁ、なんかあったと?」

れいなはまるで、「今日も寒いっちゃねえ」と世間話をするような声で絵里に聞いてくる。
深刻さや心配がまるでないその言葉に、絵里は思わず「へ?」と素っ頓狂な声で返す。

「なんて言うとかいな…なんか、悩んどぉみたいやけん」

れいなの声に、絵里は「そんなことない」と返したかった。
だが、返すことは叶わなかった。

れいなの表情。れいなが絵里に向けた真っ直ぐな瞳。れいなの優しい声。
それらが一瞬にして、絵里を捉えた。
なにも言えなくさせてしまう、れいなのすべて。
絵里が8年以上も見つめ続け、これからも一緒に歩いていきたいと思った田中れいなという存在。
ただ傍にいるだけで、心の底から落ち着くことのできる、たったひとりのあなた。

なんで、とも、だって、とも言えない。
その瞳に映っているのは、れいなの大きな瞳に映っているのは、絵里ではない。
9期メンバーで、れいなにとっては後輩、同じ福岡出身のメンバーである生田衣梨奈であった。
そんなこと、とっくに分かっていたのに、どうしても、どうしても絵里は、納得できない。

685 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:21:05.56 0
体が、心が、叫ぶ。
どうか、どうか、気付いて。
れーな、絵里は、此処にいるよ―――

「生田……?」

ねえ、れーな。
分かってるよ、絵里。
そんなの、我儘だって。身勝手だって。無茶苦茶だって、知ってるよ。

でも、でもさ、れーな。
絵里…絵里ね……

「…泣いとーと?」

絵里は、その瞳から大粒の涙を流していた。
綺麗な透明な雫は、絵里がひとつ瞬きするたびにボタッと床へ零れ落ちる。
一度流れ始めたそれは留まることを知らなかった。
樽の栓を開けて垂れ流されるワインのように、絵里は泣き始めてしまった。

686 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:21:48.39 0
「え、ちょ、生田? ど、どしたと?」

突然泣き始めた絵里に動揺し、れいなは慌てて立ち上がる。
なにか傷つけたのだろうか、ひどいことを言ったのだろうかと考えるが、れいなは答えに辿り着かない。
どうしようかと思いながらも、れいなはカバンからハンカチを取り出して絵里に差し出す。
だが、絵里は両手で顔を覆って泣いているために、それに気づくことはない。
れいなはいよいよどうしようかと考えていると、ふいにその袖に重さを感じた。
視線で追いかけると、れいなの袖を、絵里が2本の指で掴んでいた。
弱々しく震え、ひょいと腕を動かせば離れてしまいそうなくらいの力だったが、それは確かに、絵里の意志だった。
此処で振り解くことなんて、れいなにはできなかった。

れいなは再び絵里の横に座り、彼女の言葉を待った。
泣いている理由は分からないが、もしかすれば聞こえるかもしれないと思った。黙って耳をすましていれば、彼女のその涙の理由が。

「っ…すみ、ませっ……」
「ん、あ、うん、だいじょうぶやけん……」

だが、聞こえてきたのは謝罪の言葉だった。
そんなことが知りたいわけではないのだが、れいなはなにも言わず、次の言葉を待つ。
彼女は肩を震わせて、一向に泣きやむ気配はなかった。
れいなはそっとその頭に自分の右手を乗せた。

687 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:23:25.51 0
不意にやってきた温もりに、絵里の胸が高鳴った。
あの頃と変わらないれいなの優しさが一瞬にして絵里を包み込む。
れいなの横にいるのは、れいなの瞳に映るのは衣梨奈であることくらい分かっているのに、絵里は期待してしまう。
れいなの温もりを、絵里だけに降らせてくれるのではないかと。

「れっ…田中さん……」
「うん?」

隣で同じ風景を見ていたあのときのように「れーな」と呼びたかったが、それは叶わなかった。
震える声で、絵里は衣梨奈として「田中さん」と声を出す。
そして応えてくれたれいなの声に、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。鼓動を押さえるように涙を拭くが、相変わらずそれは留まることを知らない。
それでも絵里は、必死に言葉を紡ぐ。

「あ……あのっ…」

だが、体が震え、言葉がなかなか素直に出てこない。
そもそも絵里は、なにを言おうとしたんだっけ?と思う。
なにを伝えたかったのだろう。衣梨奈として、後輩として、先輩の前で泣いてしまったこの現状を、どう切り抜けるべきだろう。
絵里が言葉に詰まっていると、れいなは彼女の頭をそっと撫でてやった。

688 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:24:06.08 0
れいなはなにも言わない。理由を聞き出すことも、泣きやませることもしない。
ただ黙って「彼女」の言葉を待ち、目の前にいる「彼女」のために、頭を撫でてやる。
それがれいなの優しさであり、愛情であるというのなら、どうかこれ以上、惑わせないでほしかった。
彼女の瞳に映ったのは生田衣梨奈であるのだから、もう、期待させないでと言いたくなる。

優しくしないで。突き放して。もう、これ以上、どうか、お願い。お願いだから―――

メンバーとして、先輩として、人としてのれいなの心。
優しく降り続けたその愛情は、どうしようもないほど温かくて、だけどどうしようもないほど残酷だと思う。
身勝手だと言われても良い。あなたに優しくされたくない。だって、だって、絵里は―――

「田中さん……」

絵里はれいなが撫でていた右手をぎゅっと握りしめる。
れいなは突然のことにきょとんとするが、絵里にされるがまま、その右手をそっと下ろす。

分かっている。そんなこと、いけないことだと、分かっている。
だけど、もう、止められない。
あなたの目の前にいるのは絵里だと叫ぶことのできないいま、絵里はただ、そうする以外に方法がなかった。
そうでもしない限り、絵里はもう、壊れてしまいそうだったから。

「ごめんなさい……」

絵里はそう言うと、れいなの胸にふわりと飛び込んだ。
れいなは彼女の行動に目を見開いて驚くが、拒むことはしなかった。ただどうして良いか分からず、両腕は空を切っている。

689 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:24:36.45 0
「少しだけ…少しだけ、このままで……」

絵里が震える声でそう伝えると、れいなは一瞬の間を置き、「ん」と返した。
空を掴んでいたれいなの両腕は、暫く迷ったあと、そっと絵里の背中に回った。

瞬間、胸の奥の方がジンと痺れた。
久しぶりに抱きしめられた、れいなの感触。ずっとずっと求めていたれいなの温もり。
絵里が衣梨奈である以上、二度と触れることのできなかったれいなの心を、絵里はそのとき、感じ取った。
後輩に泣かれ、抱きつかれ、困惑のまま揺れるれいなの心は不安定で、それでも変わらぬ愛情をれいなはくれた。

名前を呼ぶことも、名前を呼ばれることも、想いを伝えることも、キスを交わすことも、絵里には赦されていなかった。

だが、絵里はたったひとつだけ、赦された。

最愛の人の前で、絵里は叫ぶように泣いた。
「れーな」と呼びたい。「絵里」と呼んでほしい。あなたが好きだと伝えたい。たったひとりのあなたと、またキスがしたい。
たくさんの願いは祈りへと変わり、絵里はただ、赦しを請うように泣いた。
変わることなく降り注がれたれいなの愛情と確かな温もりを感じながら、絵里はその心の中でなんども「れーな」と呼んだ。

690 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:26:34.45 0
れいなと絵里は並んで夜の街を歩いた。
こんなにたくさん泣いて、明日は目が腫れないだろうかと絵里は心配した。
れいなは、泣いた理由を問いただすことなく、黙って隣を歩いてくれた。その優しさが、嬉しいけど、やはりツラかった。

「じゃ、れなこっちやけん」

れいながそうして立ち止まったので、絵里も慌てて顔を上げる。
彼女は白いマフラーから顔をちょこんと出し、「今日はゆっくり休みぃよ」と伝えた。
れいなが話すたびに吐息は白くなり、辺りを染めて、空気へと溶け込んでいく。

「今日はホントに、ありがとうございました」
「いや、れなはだいじょうぶやけん。またなんかあったら、話聞いちゃるけんさ」

れいなが笑ったのを確認すると、絵里も自然と笑顔になれた。
目頭は熱くなって、また涙が零れ落ちそうになったが、絵里は頭を振ってそれを堪え、「はい」と笑った。
そして深くれいなに頭を下げると、そのまま歩き出した。
振り返って、れいなの背中を見つめたかったが、もう泣くことは赦されないだろうと、絵里は振り返らずに歩き続けた。

角を曲がったところで深く息を吐きながら天を仰ぐ。
冬の夜空は真っ暗で、ところどころに星が点在していた。
確かないのちを燃やしている星が、ただ絵里には綺麗に見えて、絵里は「はぁー」と息を吐いた。
白い吐息が夜空の星を覆い込み、そして消えていった。

「……だぁいじょーぶです」

だれにともなく絵里はそう呟き、また一歩、歩き出した。
決して止まりはしない。なんど迷っても、挫けたとしても、泣いたとしても、不安が襲ってきても、立ち止まらない。
絶対に絵里は負けないと、涙で滲んだ瞳を拭い、衣梨奈にもちゃんと返事しようと、携帯電話を開きながら家へと急いだ。

691 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:27:17.56 0
れいなは去っていった彼女の背中を黙って見つめた。
彼女が泣いた理由が、れいなには理解できなかったが、無理に問い質すことはしなかった。
ただ黙って、彼女が話すまで待っていたが、結局彼女はなにも話してくれなかった。
なにかあったのだろうかと思うが、どうしても、理由を聞くことはできなかった。

それは、なぜだろう?

彼女が泣いた瞬間、れいなは思わずその胸が締め付けられた。
突然目の前で泣かれてしまったことの動揺は当然あった。だが、それ以上になにかがあったような気がする。

頭の片隅に、ぼんやりと靄がかかったようなこの感覚。
ハッキリとは理解できないのに、なにか心に引っ掛かるような妙な感触。

―ごめんなさい……

その声の直後にやってきた、軽い衝撃。
ふわりと胸に飛びこまれ、れいなはどうして良いか分からなくなった。

メンバーが泣くことなど、いままでになんども見てきたのに、それなのにれいなは、迷ってしまった。
それはたった一瞬のことだった。気付くか気付かないかの刹那、れいなは確かに、衣梨奈の奥に「彼女」を見た。
いつも涙を堪え、人前では決して弱音を吐かずにいた彼女の表情が、衣梨奈と重なった。

692 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:27:43.37 0
今日別れる瞬間も、泣くのを我慢し、無理して笑顔をつくった衣梨奈。
そうやっている衣梨奈が、「泣くもんか」と心に決めていた彼女と、瞬間、ダブったのだ。

そんなわけないとれいなは頭を振る。
今日、久しぶりに事務所に遊びに来た彼女と逢った。
そんな彼女と同じコーンポタージュを、衣梨奈もまた飲んだ。
だから妙に意識しているだけだ。

「それ以外……ないやろ」

れいなはそう呟いて天を仰いだ。
真っ黒な空に浮かんだ星は、必死に光りを放って此処で生きていることを証明していた。
彼女も見ているだろうかとぼんやり思いながら、れいなは自宅へと歩き出す。
しかし、数歩歩いたところで立ち止まり、振り返る。

「絵里……」

れいなは彼女が歩いていった道に向かって、そう呟いた。
その声は白の吐息となって闇に紛れ、ぼんやりとした輪郭を残し、消えていった。

693 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:28:29.88 0
「なんちゃってれなえり編」終了でございます
どうしようもない想いを抱えて生きる絵里とえりぽんを描いてみたらひたすら暗いっていうw
バッドエンドではないと思いますが嫌いな方はすみません……

一応の終わりですが気が向いたら何処かでつづくかもw


とりあえず本編つづきの方も今度投下しますw

694 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:31:05.90 0
おおおっつうう!せつないよおおお!

695 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:35:56.55 0
泣いた。・゚・(ノД`)・゚・。

696 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:46:18.47 0
この設定上この展開は仕方ないかと
それにしても(つд∩)エグエグ

697 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 22:51:16.85 0
乙です!
絵里の想いもれいなの想いもものすごく胸に迫ってきて切なかったです…

あまりにもレベルが違い過ぎるので自分は初心者なりに書いていこうと思いましたw

698 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 23:48:46.68 0
新作投下します
タイトルは仮で「ガキさんの告白編」としておきます
あんなにすごい作品の後でプレッシャーですが保全代わりってことでお読み下さいw

699 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 23:52:07.35 0
『ガキさんの告白編』第1回

「生田ぁ」
ダンスレッスンが終わって帰り仕度をしていると、ガキさんから声をかけられた。
「何ですか?」
「この後ご飯食べに行かない?ちょっと大事な話があるんだ」
「はい、大丈夫ですよ」
"大事な話"という言葉が少し気になったものの、私は頷いた。

ガキさんに連れられて来たのは中華料理店の個室だった。
向かい合って席につくと、「あと二人来るから」とガキさんは言った。
二人?誰が来るんだろ?と思いを巡らせていると程なく個室のドアが開いた。

中に入って来た人物を見て思わず驚きの声をあげそうになった。
「お〜、カメ。生田の隣に座って」
入って来たのは亀井絵里の姿の生田衣梨奈だった。

もしかしてばれた?えりぽんと素早く目で会話する。
と、そこへ再びドアが開き、今度は本当に声に出してしまった。
「安倍さん!!」
私にとって、もちろんえりぽんにとっても大先輩のモーニング娘。初期メンバーの安倍なつみさんその人だった。

安倍さんがガキさんの隣に座ると、ガキさんは口を開いた。
「生田、カメ、あんたたち入れ替わってるでしょ」
いきなり核心をつく質問に私は動揺する。
「な、何言って…」
「もう隠さなくてもいいよ。だって…」
言い繕おうとする私の言葉を遮ってガキさんが告白したのは衝撃の事実だった。

「だって、私達も入れ替わってるんだもん。分かるよ。新垣里沙の姿の私が安倍なつみで、こっちが新垣里沙」


700 :名無し募集中。。。:2012/01/20(金) 23:56:13.24 0
>>699
『ガキさんの告白編』今日は導入部分ということでここまでです
明日は作者が冬ハロ神戸に参戦の為続きは日曜日以降になります
まだ中編になるか長編になるか見当がつませんがよかったらお付き合い下さい

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0ch BBS 2005-12-31