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もしあいぼんがまろやかなロマネコンティだったら

552 :名無し募集中。。。:04/09/06 16:00
「どぉそっちは大丈夫だった?」
「うんなんとか」
「すごかったね」
「うん」
私とお母さんは互いの無事を確認してから改めて先ほどの地震の大きさに怯えていた。
どうにか家は無事だったものの辺りには棚から落ちたものが散乱している。
こんな地震は生まれて初めてだ。
激しくきしむ家の中で「もうダメだ」と本気で思った。
せめてもの救いは昼間だったこと。
夜だったら眠ったままタンスの下敷きになっていたかもしれない。
「きゃー!ちょっと!!」
台所からお母さんの悲鳴が聞こえる。私は慌ててすっ飛んでいった。
「・・・げ」
そこはもう台所という名の戦場だった。それも、空襲後、といった感じの。
「・・・・全滅だわ」
棚のガラスを破って食器が飛び出し、冷蔵庫の扉も盛大に開いて中身を吐き出していた。

553 :名無し募集中。。。:04/09/06 16:01
「・・・ワイン!」
私とお母さんは半地下になっているワイン倉庫の扉を開けた。
そこも地震という名の攻撃を受けていた。しかも最悪なものを的にして。
「おかぁさん、・・・あいぼんがぁ・・・」
壁際に並んだワインセラーからいくつかのワインが飛び出し床に中身をぶちまけていた。
「あらあら・・・困ったわねぇ」
無趣味な父が唯一病的なまでにのめり込んでいるワイン収集。
前に兄がこっそりとコレクションに手をつけたときは烈火のごとく怒り
その遺恨は父と兄の間に未だに影を落としている。
私も一度粗相してビンを割ってしまいこっぴどく叱られた思い出がある。
「どうしてこんないたずらをしたんだっ!」
飛んできた平手はよける間もなく音高く私の頬に当たった。
『お父さんは家族よりもワインの方が大事なんだ』
ぶたれて赤らんだ頬をお母さんに冷やしてもらいながらそう、思っていた。
それからというもの私達家族は絶対にお父さんのワインには近づかなかった。
そして私達とワインとの距離はそのままお父さんと私達との距離だった。


554 :名無し募集中。。。:04/09/06 16:01
「お父さん怒り狂うね」
「仕方がないわよ」
互いに顔を見合わせ大きくため息をつきワインの海と化した部屋を眺めた。
「とりあえず、片付けようか・・・」
とにかく父のショックを和らげるにはこの部屋を少しでも片付けておく必要があった。

幸い余震もなく片付けも進んだ。
私が父が最も気に入っていた「あいぼん」のかけらを拾っていたときだった。
「おいっ!誰もいないのかっ!おいっ」
玄関のほうで怒鳴り声が聞こえドタドタと足音が近づいてくる。
私たちは互いに見つめあい身を強張らせた。
ばんっ!と乱暴に扉が開いた。―――この部屋を開けるときは慎重な父らしくない開け方で。
ドアの向こうから現れた父は鬼の形相をしていた。

555 :名無し募集中。。。:04/09/06 16:01
「・・・ワイン、割れちゃった」
何か言われる前にとりあえず父を諌めようと割れたビンを差し出した瞬間、
私はぎゅっと抱きしめられた。
「よかった・・・・無事だったのか・・・」
何がなんだかわからずに私は父に抱きしめられている。
「よかった・・・ほんまよかったなぁ」
父の大阪弁を聞くのは小さい頃に父の実家に帰ったとき以来だ。
それまですっかり忘れていたのだが私たちは地震の後も父に連絡をとっていなかった。
回線が混雑してなかなか電話がつながらないのに痺れを切らせた父は
3駅先の出先から走ってきたのだという。
「お父さん、『あいぼん』割れちゃったよ」
抱きしめられたまま私は言った。
「そんなん、また買うたらええ。」
そういってもっとぎゅっと強く抱きしめられた。

下に広がるあいぼんの甘い香りに代わって走ってきたお父さんの汗の匂いがした。


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0ch BBS 2005-12-31