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もしあいぼんがまろやかなロマネコンティだったら
124 :
名無し募集中。。。
:04/08/20 14:55
うちのじじいは年に似合わずわりとおしゃれな人だった。
近所じゃ「おじいちゃま」なんて呼ばれていたが中身は生粋の頑固爺。
やんちゃ盛りの頃にどれ程ゲンコツを食らったか知れない。
「お前が小学校に上がるまで生きてられるといいけどなぁ」
まだ小さな俺を膝に乗せて頭をなでながらじじいは言った。
「じーちゃん長生きしてよ」
幼心にも切なくなって俺はじじいにそう言った。
頭を撫でてくれた手は暖かく、ずっしりと重かった。
夏空の下でじじいの顔がしわくちゃになった。
125 :
名無し募集中。。。
:04/08/20 14:56
「お前が中学に上がるまで・・・」
「お前が高校に上がる姿を・・・」
じじいは病気はおろか怪我ひとつしない人だったのが事あるごとにこう言った。
「うるせーな、てめぇなんか殺したって死なねぇよ」
半分冗談、半分照れ隠しの拙い慰めの言葉。
怪我も病気もしなくてもじじいは確実に老いていった。
俺はいつしかじーちゃんをじじいと呼ぶようになり
背を追い越し、腕相撲でも負けることがなくなった。
いつまでも子ども扱いするじじいに反発しゲンコツを食らい
悪態をつき、自己嫌悪で泣いた。
126 :
名無し募集中。。。
:04/08/20 14:57
「何してんの」
あれは高校1年の頃だったろうか。とにかく暑い日だった。
塾から帰ると縁側にじじいがいた。
「おう、勉強がんばってるか」
すっかり自分より小さくなってしまったじじいが
顔をくしゃくしゃにして半分ばかり入ったワイングラスを傾けた。
毎年何処からか送られてくるお中元。
じじい以外は贈り主のことを「ワインの人」と呼んでいた。
「あいつからの最後のワインだ」
茶目っ気たっぷりに香りを嗅ぐと旨そうに口に含み、口の中で転がしてから飲み込んだ。
「ああ、仲間がどんどんいなくなる。香典を払うばっかりで俺の時に持ってくるやつなんていないだろう。まったくもっと早く死んでおくんだったな」
じじいらしいいつもの強がり。
俺は高3になるまで真面目に勉強してきたがこんなときにかける言葉は習わなかった。
「うまいの、それ」
胸のつかえをごまかすように話題を変える。
「ああ、うまいぞ最高級のワインだ。あいぼんって聞いたことあるだろう」
「さぁ、あんまり」
「ふん、お前はまだ子どもだからな・・・お前が成人するまで生きていられたらいいけどな」
「・・・・・・・・・・・」
「ああしかし今日は暑いな」
そういったきりじじいは黙り、俺も口をつぐんだ。
『死ぬなよ、じじい』
俺はのどの奥にこみ上げるものを無理やり飲み込んだ。
127 :
名無し募集中。。。
:04/08/20 14:58
>>123
色々あるみたい
ロマネコンティって会社があって、
何種類?かのワインを作ってる
で、その会社名がそのままつけられてる
ロマネコンティってワインもあって、
それがたぶんこのスレで言うあいぼんの事かと
128 :
名無し募集中。。。
:04/08/20 14:58
次の年の秋にじじいは倒れ春を迎える前にじじいは死んだ。
葬式の夜供えてあったあいぼんを一本くすねた。
ぶどうジュースのようなそれはしかし俺の子供の味覚には苦すぎた。
「おじいちゃん、いくらお盆だからって飲みすぎよ」
ふっと遠くにやっていた思考を取り戻す。
中学生になった途端妻に似て口うるさくなった孫娘に睨まれる。
その言葉に反抗するようにグラスを傾ける。
「おい、お前が二十歳になったら俺と一緒にコレを飲むんだぞ」
怪訝な顔をする孫娘を尻目にあいぼんを口の中に流し込む。
口の中で転がしたあいぼんは仄かに夏の香りを放ちながら甘く溶けていった。
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