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レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘) Part3

318 :名無し募集中。。。:2012/02/11(土) 04:08:25.79 0
>>262-264


衣梨奈は携帯電話を見つめながら、どうしようかと悩んでいた。
本来であれば、最初に電話で話した直後、絵里に話すべきだったのだと思う。
だけど、衣梨奈はどうしても、そうすることができなかった。
絵里に話してしまえば、余計に彼女が傷つきそうな気がして、衣梨奈は最後まで言うことができなかった。
話さないでいることが、得策だとも思えなかったけれど。

「絵里っ」

彼女の声が追ってきて、衣梨奈はふと顔を上げた。
視線の先には、目を細めて笑う、れいながいた。衣梨奈も優しく微笑み手を挙げた。

「ごめん、仕事遅くなって」
「ううん。私もさっき着いたから」

そうして衣梨奈が笑うと、れいなも照れたように笑い、「行こうか」と歩き出した。
衣梨奈も釣られてれいなの隣を歩く。

319 :名無し募集中。。。:2012/02/11(土) 04:09:11.90 0
---------

事の始まりは、昨日の夜にかかってきた1本の電話だった。
衣梨奈は姿見に自分を映しながら、絵里に教えてもらったダンスの振りを確認していた。
いつ戻れるか確証も保証もないけれど、このまま立ち止まっていることなどできない。
少しでも同期や後輩に置いていかれないように、衣梨奈はなんども振りを確認する。
衣梨奈が大きく脚を上げ、ダンと踏み込んだときだった、衣梨奈―――本来は絵里のものである携帯電話が鳴った。
ふと動きを止めて、衣梨奈が携帯の画面を見ると、着信相手はれいなであった。

衣梨奈の頭の中に、先日の出来事がよぎった。
メンバーに会うために、久しぶりに事務所に顔を出したとき、衣梨奈はれいなにキスをされた。
もちろん、れいなに非があるわけでもないし、まして衣梨奈自身が悪いわけでもない。
だが、あのキスは、衣梨奈の心の中に確かに残り、言いようもない痛みを携えて停滞していた。

衣梨奈は迷った挙句、その電話を取った。

「もしもし?」
「あ、絵里?いま時間だいじょうぶやった?」

れいなの明るく、そして優しい声が耳に届き、衣梨奈はぎゅうと胸が締め付けられた。
衣梨奈も努めて「うん、どうしたの?」と明るく返す。絵里独特の間延びした声は、まだ真似できそうにない。

320 :名無し募集中。。。:2012/02/11(土) 04:09:48.73 0
「明日って時間ある?」

そう話を振られて衣梨奈の心臓が高鳴る。
衣梨奈は電話口のれいなに悟られないように手帳を開き、息を飲む。
確かに明日は終日予定がない。だが、此処で「空いている」と返すことは果たして得策だろうか。
衣梨奈は一瞬のうちにそれを判断しようとするが、結局、良い答えにはたどり着かない。

「……どしたの?」
「いや、仕事終わりにご飯でもどうかなと思って。この間も、あんまり話せんかったけん」

れいなの言う「この間」とは、間違いなく、先日、事務所に会いに行った日のことだ。
あの、キスを交わした日、衣梨奈は絵里になりきったとはいえ、そのキスの重さには耐え切れなかった。
れいなを、絵里を、真っ直ぐに見つめることはできず、痛みを携えたまま家に帰ってきた。
だが、それを後悔したところで物事は進まない。たぶん、前に進む以外に方法はない。

「れいな、仕事は何時に終わるの?」
「んー、いまのところ6時やけん、だいたい7時過ぎには行けると思うっちゃん」

321 :名無し募集中。。。:2012/02/11(土) 04:10:22.17 0
れいなの返答を聞き、衣梨奈はひとつ、覚悟をする。
戻ることは、もう、できない。
絵里と不可思議な入れ替わりをしてしまった以上、絵里としての人生の道を行くしか術はない。
そんなこと、分かっている。頭の中では充分に理解しているつもりだった。
たとえそれが、絵里とれいなの気持ちを踏みにじっていることに繋がっていたとしても―――

「いいよ。明日、会おっか」

衣梨奈の返答を聞いたれいなは電話越しに笑い、「また詳しいことはメールする」と電話を切った。
無機質な通話音を聞いたあと、衣梨奈はベッドに背中から倒れ込み、天井を見上げた。
白い天井は衣梨奈に迫ってくるようで、本当にだいじょうぶなのかと問うてきた気がして、衣梨奈はごろんと体を横に向ける。

会って良いのかという疑問は常に頭の片隅に存在していた。
だが、会わなくて良いのかという疑問も確かにあった。

会わないまま、ずっと逃げ続けるわけにもいかない。
れいなの気持ちが絵里に向いている以上、その感情を無視していくことなんて、できない。
ただ、その気持ちに応えることが、絵里の気持ちを考えていないのではないのかということにも、衣梨奈は気付いていた。

322 :名無し募集中。。。:2012/02/11(土) 04:10:50.57 0
だが、どちらかを選ぶことはできない。
衣梨奈が絵里である以上、衣梨奈は絵里としての選択をするべきではないのかと考えていた。
れいなの熱いキスを受け入れた、あの日から、ずっと―――


自分の気持ちが、たとえ、別の人に向いていたとしても。


衣梨奈は枕に顔を埋め、「うぁあああ」と叫ぶ。
頭の中はぐしゃぐしゃしていて、答えなんて出そうになかった。
どれが正解で、どれが間違いなんて、たとえば知っている人がいたとしたら教えてほしかった。
それが自分にとっての最善の判断でなかったとしても、衣梨奈はそれに従うからと、衣梨奈はぎゅうと目をつぶり、「だれか」に、聞いた。

れいなから、明日についてのメールが来たのはその数分後のことだった。

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0ch BBS 2005-12-31