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ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘) Part2
145 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:02:29.56 0
>>123-128
アル編のつづきです
日が沈んでいく屋上で、絵里は膝を抱えてひとり泣いていた。
アルに叫んだところでどうにもならないことくらい、分かっていたのに。
だが、叫ばずにはいられなかった。
あの犬のせいで、衣梨奈は死ぬかもしれないのだから。
「生田はっけーん」
屋上の扉が開くと同時に明るい声がした。
絵里はその声の主がだれか分かったが、振り返るのも億劫でそのままにいると、彼女は絵里の横に腰かけた。
「日が沈むねー」
暢気にそう言ってはいるものの、彼女の瞳は揺れていた。
彼女、道重さゆみが、自分の大親友である絵里の事故にショックを受けていることくらい、見れば分かる。
あれは絵里だけどえりぽんなんだよと言えば、もっとショックを受けることも、絵里は知っている。
146 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:03:42.56 0
「絵里の色やね…」
そっと呟かれた言葉は、山口弁に近かった。
博多弁を使うれいなの前でしか言わないその言葉をどうしていま言ったのかは分からない絵里は、ふっと顔を上げた。
「アルのせいじゃないでしょ」
「え…?」
「絵里はそういう子なんだよ」
さゆみは真っ直ぐに衣梨奈を見つめてそう言った。
その瞳はもう、揺れていない。彼女の真っ黒な瞳は、絵里のすべてを、知っていた。
「人が困ってるのを見過ごせない、自分より人、自然に手を差し伸べられる子なんだよ、亀井絵里は」
さゆみは遠く、日が沈む街を見つめながらそう言って笑う。
自分の話でもないのに嬉しそうに話すその姿は、なぜだろう、とても安心できて、とても寂しかった。
「生田が絵里を心配してるのは分かるけど、アルを責めるのは間違ってるよ」
優しい声から一転し、さゆみはハッキリと言い放つ。
彼女の瞳は、真っ直ぐだ。それが、怖い。だけど、美しい。
分かっている、彼女はいつも、正直だ。
さゆみだって、理不尽なこの事故に怒りを感じているし、絵里を心配し、精神的に不安定でもある。
だが、さゆみは決してその怒りや悲しみを人にぶつけない。「亀井絵里」を知っているさゆみだから、決して責めない。
さゆみは、そういう人間だ。
147 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:04:33.61 0
「……すみませんでした…」
本当は、最初から分かっていた。
衣梨奈が道路に飛び出したのは、確かにアルのせいだ。
だけど、アルを追って飛び出たのは、生田衣梨奈の優しさだ。
一緒に活動した期間はなくとも、入れ替わって過ごした期間に、絵里は衣梨奈のことを少しずつ理解してきた。
もちろん、生田衣梨奈のすべてを理解できるなんて思ってもいないけれど。
それでも分かることがある。
衣梨奈もまた、自分の心に正直に生きているのだ。
アルが道路に走っていった。それを衣梨奈は追ったのだ。
たとえ飼い犬でなくても、危ないと思ったから、ただ助けたいと思ったから、だから衣梨奈は走ったのだ。
紛れもなくそれは、衣梨奈の優しさであり、彼女の心だった。だれのせいでもない、生田衣梨奈の魂だった。
「じゃ、アルに謝ること。アホはまあアホだけど、絵里の犬なんだからね」
おい、人の犬をそこまで言うことはないだろ。いや、確かにアホですけど。
絵里は、さゆみなりの優しさに苦笑しながらも「はい」と返した。
するとさゆみも「よし」と頭を撫でて立ち上がった。凛としたその姿は、誇らしい、同期の姿だった。
「さゆみは帰るけど生田はどうする?」
「あ…もうちょっと、此処に居ます」
「そっか。あんまり遅くならないようにね。ガキさんには、さゆみから言っとくから」
148 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:05:09.20 0
そうしてさゆみは手を振って屋上をあとにした。
絵里はぺこっと頭を下げたあと、再び夕陽を見つめた。
世界をオレンジ色に染める切なくて、だけど何処か優しい色に絵里はどうしてか、涙が出そうになる。
こんな夕陽を見ながら、衣梨奈もアルとともに歩いていたのだろうか。
―絵里の色やね…
あの声は、いまにして思えば、同期ふたりのものだった。
博多弁を使う、此処にはいないもうひとりの同期、田中れいな。
彼女こそ、自分の心に素直で、その言動はときにメンバーをドキッとさせ、冷や冷やさせる。それが無性に、羨ましくもある。
今日、此処には居なくとも、れいなもまた、さゆみと同じように絵里を心配しているのだろうなと思った。
亀井絵里がどれだけの人に愛されているかを、絵里はいま、痛感した。
だけど、此処に居るのに、此処に絵里は確かに居るのに、と、絵里は目を伏せる。
いつになったら、戻れるのだろう。
いつになったら、亀井絵里として笑えるのだろう。
いつになったら、えりぽんとまた一緒に歩けるのだろう。
沈んでいく夕陽に目を細め、絵里は膝を抱えた。
ぎゅうと自分を守るように体を抱きしめ、絵里は目を閉じた。
149 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:06:13.31 0
何処かで犬の鳴き声がした。
絵里はひとつくしゃみをすると目を開ける。日はとっくに沈み、夜の静寂と冷たさに街は包まれていた。
あれ、此処は何処だっけと思うが、うっすらと記憶が邂逅する。そっか、あのまま寝ちゃったんだと絵里は苦笑した。
泣いていたのだろうか、頬には涙の痕が残っている。まるで子どもだと苦笑しながら拭うと、犬の声がした。
それがアルだと気づくのに時間は必要なかった。
アルは絵里の足元で尻尾を振ってこちらを見ていた。
真ん丸な瞳が無性に可愛くて、絵里は「よしよし」と頭を撫でる。
普段なら嫌がるのに、今日は大人しいなと思いながらも、絵里はアルに話しかけた。
「ごめんね…さっき」
アルは尻尾をすっと下ろし、吠えることをやめた。
「アルのせいじゃないのにね…」
これはなにかの罰なのだろうか。
絵里が生きてきて、なにか悪いことでもしたのだろうか。
かみさまの気に触るような、なにかとんでもないことをしでかして、衣梨奈にもその火の粉が降りかかったのだろうか。
絵里は泣きそうになるのを堪えながらただ無意識に「えりぽん……」と呟く。
150 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:06:54.13 0
リンリン編
>>108
の続きから投下します
151 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:06:56.19 0
瞬間、アルは耳を立て、ひとつ吠えたあと、走り出した。
突然の行動に絵里は眉を顰めるが、迷うことなくアルを追った。
まだ謝り足りてないよと思い、アルの背中を追うが、いかんせん、相手は犬、速い。
「アル、此処は病院だからー」
そんな病院で叫ぶ自分もどうかと思うが、絵里は止まらない。
とにかくアルを追うと、彼は突如、止まって、振り返る。
絵里も慌てて止まり、アルを見つめる。
アルの黒い瞳は真っ直ぐに、絵里を見つめていた。
どうしたのだろうと思うが、アルはなにも言わずにこちらをただ見ていた。
絵里は眉を顰めじっと彼を見るが、当然、なにも答えない。
だが、アルを見つめるうちに、絵里は奇妙な違和感を覚えた。
この感覚、前にも何処かで味わった。
そう、それはさほど遠くない過去、本来のものでないものを見るような、そんな感覚。
152 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:07:58.90 0
>>150
すみません アル編もうすぐ投下し終えますのでよろしくお願いします
まさかと思うが、もちろん確証はなかった。
絵里がなにかを言おうとすると、アルは再び走り出した。絵里は慌てて追う。
アルが入っていったのは、小児病棟の多目的ルームだった。此処は、小児患者の触れ合いの場になっており、さまざまなおもちゃが置いてある。
いまは夜のためか、人は誰もいなかった。
病院内で犬を連れているなど、不都合にもほどがあったので、絵里は正直ほっとした。
アルはそんなことも気にせずに、多目的ルームをウロウロする。
なにをしているのだろうと思っていると、アルはおもちゃ箱を倒した。
「あー!」と叫び、絵里は慌ててそれを元に戻すがアルは意に関せず、中身を物色する。
やっぱりアホ犬だぁと思っていると、アルは「くーん」と鼻で鳴き、それの上に前足を乗せた。
153 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:08:24.40 0
それは積み木だった。
正確に言うと、50音のうち、「な」と書かれた積み木。
絵里が思わず「は?」と口に出すと、アルは再び倒したおもちゃ箱から同じ積み木を見つけ出し、また前足を乗せる。
今度の積み木は「え」であった。
なにが言いたいんだろうと思いながらも「な、え?」と言うと、アルはまた積み木を探し、足を乗せた。
「こ?」
そう言うと、アルは吠えた。
あ、ごめん違ったね、と絵里は慌てて左に回転させると、それは「こ」ではなく「り」であった。
「な」と「え」と「り」……と考えていると、絵里は「あ」と口に出した。
「あんた、えなり君が好きなの?」
テレビに出ている俳優の名前を口にすると、アルは先ほどより強く吠えた。
どうも怒っているようだ。
「あー、そんなに吠えると聞こえるでしょ!」
絵里はアルの口をおさえると、答えに行きついた。
同じように「あ」と思わず声を上げたが、先ほどのそれとは質が違った。
自分の覚えた違和感、一瞬の感覚、そしてこの積み木……考えたって答えはひとつしかない。
現実離れしているとか、あり得ないとか、馬鹿げているとか思われても構わない。だって、絵里の魂が此処にあるのだから。
154 :
名無し募集中。。。
:2012/01/04(水) 23:08:46.77 0
「えりぽん……?」
たったひとつの仮定に行きついたとき、アルはぱあっと笑顔を見せた。
そう、確かにアルは笑ったのだ。口を大きく開け、目を細めて、笑ったのだ。
その姿は、紛れもなく、あの日に見た、生田衣梨奈の笑顔だった。
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