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もしあいぼんがまろやかなロマネコンティだったら

646 :名無し募集中。。。:04/09/10 21:21:01
「・・・これが今週届いた分です。で、こちらはまぁお礼というか前に掲載されたものの返事ですね。
 返信するかどうかはいつも通り先生に一任いたしますので。
 はい。じゃぁ原稿の方は来週までに。失礼します」
いつもせかせかと忙しい編集者は額の汗を拭いながら手紙の束を置くと麦茶を飲み干すなり帰ってしまった。
まぁあまり居座られて色々口出しされるのも僕の望むところではないが。
「ふぅ。・・・どれどれ?」
僕はとりあえず返事だという手紙の束を引き寄せた。
仕事を片付ける前に前の仕事に対する反応を見て
鋭気を養わなければならない。

僕は今地方の小さな新聞の子供相談の連載を抱えている。
一応は教員免許を持ち、数年ばかり教壇に立っていたが
新聞社に勤めた友人からの依頼でなんとなく引き受けたのがずるずると続いて
いつの間にか子供相談の仕事や公演などが僕の生業になっていた。
僕のような凡庸でいい加減な者に相談を持ちかけるほど困っている人が多いと見えて
毎日のように届く手紙の多さに少し怖くなるくらいである。
「えーと、何々・・・『この前はご相談にのっていただき・・・」
それは、子連れで再婚したはいいが
最初は新しい夫に懐いていた子供が弟の誕生とともに元気がなくなった
という旨の悩みを相談してきたご婦人からの返事だった。

647 :名無し募集中。。。:04/09/10 21:22:18
この前は相談に乗っていただきありがとうございました。
先生の暖かい助言によって本当に家族の絆が深まったことを感謝し、
また報告もかねて筆を取りました。

前の手紙にも書いたとおり小学2年になる娘が
私と新しい夫の間に弟が生まれてからどうも元気がなくなり困っていたのですが、
やはり先生が新聞で書かれていた通り
「新しいお父さんに懐き本当の家族のように過ごしていたところに弟が生まれ、
 疎外感と寂しさを感じていた」ようです。

結婚以前から今の夫とは本当の家族のように接していて
結婚してからも前から一緒に暮らしていたように懐いていた娘ですが、
やはり弟ができたことでなにかプレッシャーのようなものを感じていたのかもしれません。
学校でも何か言われたようですがそれは結局話してくれませんでした。
前は甘えん坊でも言いつけを守り素直な活発な子だったのですが、
弟が生まれて一月くらいから私にべったりくっついて弟や夫とは距離を置くようになり、
独りにしておくと急に泣き出したり怒り出したりで
私たちはどうしていいのかまったく分かりませんでした。
前の手紙には書きませんでしたが私と夫が夜お酒を飲んでいるときに
娘が起きてきて「私にも飲ませて」と言ってきたことがありました。
当然私たちは「これは大人の飲み物だから」とつれなく断りました。
これがどうも娘にとっては自分だけが疎外されたと思った原因のようです。
また、下の子が少しアトピー気味で私たちが過保護にしていたのも
彼女の目には弟ばかりを大事にしているように見えたのだと思います。

648 :名無し募集中。。。:04/09/10 21:23:36

ある日下の子の検診で夕方遅くに帰ったことがあります。
娘には予め遅くなるかも、といっておいたのですが
病院が込み合い予想以上に遅れて帰宅したのです。
するとどうでしょう、居間や子供部屋は散らかしっぱなしで
キッチンに入るとよく主人と飲むあいぼん(ご存知だと思いますがワインです)が
下で割れていました。
私はぎょっとなって娘を探しました。
すると娘はテーブルの下で丸くなって泣いていました。
私は怒りたいのをぐっと堪え娘に「どうしてこんなことしたの?」と尋ねました。
けれど娘は頑固なまでに丸くなったまま答えません。
夕飯になって主人が帰宅しても頑ななまでにソコを動かず、何も言わず、
結局私たちが食事を終えてもテーブルの下から出てきませんでした。
主人も気を使ってあれこれ話しかけていましたが結局諦めて寝てしまいました。
その日から娘は前にも増して元気がなくなりそれで、先生にご相談したというわけです。

「ふぅんなるほどねぇ」
ここまで読んで僕は事の重大さを深刻さをようやく理解した。
そして僕の考察があながち間違っていなかったことをほっとしながら、
またもし見当違いの回答をしていたら、とヒヤリとしながら手紙を読み進めた。
子供は大人が思っている以上に物を考えている。
ただザンネンなことに大人になったとき子供の頃自分がどう考えいたのかを忘れてしまうのだ。
大人になるにつれ身につける「子供はこう」という既成概念によって。

649 :名無し募集中。。。:04/09/10 21:25:00
私の相談に対する先生の答えは
「家族が全員で楽しめることを見つけて『あなたも家族なのよ』と
 実感できる体験をさせてあげてはどうでしょうか」といものでした。
そこで私たちは家族で遊園地に行ったり、買い物にいったり、
日帰りで旅行に行ったりして娘と一緒に過ごす時間を増やしました。
ところが、いつまでたっても、何をやっても娘は心を開いてくれません。
遊園地などでは楽しそうにはしゃぐのですが帰ってくると元気がなくなるのです。

ある日また娘があいぼんのビンを割りました。
そしてそれを見ていた夫が少しキツイ調子で叱ったところ部屋へ閉じこもってしまったのです。
私が一晩中そばについていたら、ようやく娘が布団の中から顔を出しました。
そしてこう言うのです。
「なんで私ばっかりあいぼんのめないの?」
お父さんもお母さんも弟も飲んでいるのに、と。
どうやら下の子が飲んでいるアトピー用のシロップ薬をあいぼんだと勘違いしているようでした。
「『ち』がつながってないから?だからわたしはあいぼんのんだらだめなの?」
と、泣きながら彼女は聞いてきました。
「前のお父さんの子だから今のお父さんとはあいぼん飲めないの?」
それでやっとわたしは理解したのです。


650 :名無し募集中。。。:04/09/10 21:26:07
娘にとって家族であると実感させてくれるのはみんなであいぼんを飲むという行為なのです。
私と夫だけが(娘は弟も入っていると思っているようですが)あいぼんを飲んでいるのに
自分は飲ませてもらえないのは自分だけが血が繋がってないからだと思っていたようです。
それが寂しくて悲しくて元気がなくなり、原因であるあいぼんを2度も割ったのです。

そんなつもりはまったくないのに
私たちは二人であいぼんを飲むたびに彼女の小さな心を傷つけ、
悲しい思いをさせていたのでした。

「いい子にしてたらお父さんと「血」つながる?あいぼん飲める?」
という娘を泣きながら抱きしめました。

どんなに明るく懐いているように見えても彼女は彼女なりに考え、
気を使っていたのです。

651 :名無し募集中。。。:04/09/10 21:29:01
ようやく彼女の元気の無い理由が分かり
私は早速その解決策を練りだしました。
直接あいぼんを飲ませてもよかったのかもしれませんがさすがにそれはためらわれたので
あいぼんを使ってワインゼリーを作りました。もちろん娘も一緒です。

出来上がってキレイに固まったあいぼんを見て娘が言いました。
「見ててお母さんあいぼんゼリーの親子だよ」
そういうと生クリームでゼリーの上に笑っている顔を書きました。
「ほら、皆仲いいんだよ。でもね、うちよりは仲悪いの」
どうして?聞くと娘は嬉しそうに答えました。
「だってわたしたちが皆でコレ食べちゃうから、そしたらうちらの方が仲よくなっちゃうから!」
そういって嬉しそうに笑いました。本当に心からの笑顔でした。

初めて作ったあいぼんゼリーは上出来のできでした。
家族の絆もぐっと深まり
それ以来あいぼんゼリーは我が家の定番おやつとして定着し、
家計のやりくりをちょっと難しくしています(笑)


手紙はその後明るくなった娘さんの様子と僕への感謝の気持ちがしたためられていた。
僕は嬉しい気持ちで心を満たされながら手紙の束をカバンにしまうと部屋の時計を見た。
少し早いが今日はこれで店じまいにしよう。
残っている手紙はの処理はまた明日。今日の予定はもう決まっている。
お中元でもらったあいぼんを肴にもう一度この手紙に漂う幸福感に酔のだ。
僕は少しニヤつきながら夕暮れの街へ踏み出した。


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