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ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘)

449 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:16:11.50 0
>>367つづき


「えりぽーん、ごはん食べよ」

撮影が休憩に入り、絵里は聖に話しかけられた。
絵里はふうと息を吐き、だいじょうぶと心の中で言い聞かせ、「うん」と笑顔を向けた。

午前中から撮影、撮影、また撮影。
その合間に、9期メンバーと他愛ない雑談をしたり、「先輩」であるさゆみやれいな、そして里沙の撮影を見ていたりして時間を過ごした。
いまは昼休憩で弁当を食べているが、なにもかもが懐かしくて、徐々に絵里は楽しくなってきた。
衣梨奈と入れ替わったことで、不安や心配、悩みはもちろん尽きないのだが、それでも絵里は自然と笑顔になっていた。

娘。を卒業して約1年振りの現場。
今日は撮影だけのようだが、明日以降はダンスレッスンやボイストレーニングもあるようだ。
歌うことも踊ることも、娘。にいたころは当たり前にやっていた行為が、いまではとても懐かしい。
結局、自分は表現することが好きなんだなと絵里は改めて感じた。

「えりぽん、なんかあった?」

絵里が自分の思考の世界に入っていると突然、隣に座っていた聖にそう言われドキッとした。
動揺を悟られないように弁当のキュウリに箸をつけ口に放り込み「なんで?」と返す。

450 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:17:04.17 0
「うーん……なんとなく」
「えり、なは、普通だよ」

思わず「えり」と言いそうになり、慌てて「な」を付け足したせいで妙な間が空いてしまった。
いまさら悔やんでも仕方ないが、絵里は溜め息を堪え、ペットボトルに手を伸ばす。緑茶が喉を潤していった。

「なにもないならいいんだけどさー」

そうして聖は弁当を食べ終え、箸を袋にしまった。
彼女の目は真っ直ぐに絵里を捉えていて、思わず顔を背けたくなる。
先ほど、れいなに見つめられたときとはまた違った迫力が彼女にはある。そういえば、れいなはあのとき、なにか言いたかったのだろうか?

「そんなに、悩んでるように見える?」
「悩んでるの?」

敢えて質問をしてみたのだが、聖はさらに質問で返してきた。
譜久村聖。
9期メンバー内では最年長・中学3年生・エッグ出身で衣梨奈に劣らずハロプロ大好き・観察眼は高い。
ハロプロエッグに所属していたので、絵里ともなんどか会話したことはある。
聞くところよによると、絵里のことも相当好きでいてくれているというか…尊敬しているらしい。
そんなに尊敬されるような人じゃないんだけどな私…と絵里は思いながら「寝不足なだけだよ」と返した。

451 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:17:48.46 0
「おはスタもあるし、朝早いもんね」

聖が苦笑しながらいったその言葉に、絵里は一瞬動きを止めてしまった。
そうだ。ダンスレッスンやボイストレーニングなどはともかく、おはスタという仕事があるのだと改めて思い出す。
絵里も録画ではあるが、何回か見たことがあるのだが、衣梨奈と同じ事が出来るとは到底思えない。
お天気コーナーはともかく…あの「はんどすぷりんぐ」なるものは出来る気がしなかった。いや、バトンもたぶん無理だろうけど。

「どうしよ…」

次のおはスタがいつ収録かはまだ聞いていないが、絵里が思わず発した言葉に聖は首を傾げた。

「なにが?」
「あ……うん、えっと……宿題…とか?」

絵里が思いつきで放った言葉を聖は「ふーん」と流し、立ち上がって空の弁当箱をゴミ箱に捨てた。
いまひとつ腑に落ちない顔をしながらも、聖はポーチから歯ブラシセットを取り出した。
絵里も壁に掛けてある時計を見ながら、慌てて残りのご飯を口に放り込んだ。

452 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:18:42.19 0
「はい、生田さん終了です。お疲れさまでしたー!」

スタッフさんの声とともに、絵里も「ありがとうございましたー!」と声を上げ、頭を下げた。
次々に「お疲れさまです」と声をかけられ、絵里も丁寧に頭を下げながらスタジオから楽屋へと戻っていく。
久しぶりの現場に、絵里は懐かしさと喜びを感じたが、同時に疲労感も確かに覚えた。
休養を取っている間に忘れていたが、モーニング娘。の仕事は確かに大変だ。
こんなにハードスケジュールを8年間もやっていたのかと改めて思い出し、いまの9期メンバーや10期メンバーもついていくのに必死なんだろうなと考えた。
それがこの業界では当たり前だということも、分かっているのだけれど。

絵里が楽屋に入ると、そこには次の撮影を待っている6期メンバーのふたりがいた。

「お、生田終わったー?」
「あ、はい。終わりました」

ケータイを見ながら、恐らくブログを更新していたであろうさゆみに聞かれ、絵里は笑顔で返す。
もうひとりの同期はというと、楽屋の端の方で音楽を聴きながら目を閉じている。
ああやって眠るときもイヤホンをつけているれいなに、耳が悪くなるからやめなってなんども注意したことをふと思い出した。
衣梨奈のこの体でそんなことを言おうものなら、まず怪しまれることは確実なので、絵里はなにもなかったように帰り支度を始めた。

453 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:19:52.85 0
「ねえ、生田」
「はい」
「ホントに、大丈夫?」

さゆみの声に、絵里は手を止めた。
ふと彼女を見ると、さゆみはケータイから手を離し、真っ直ぐに絵里、生田衣梨奈を見つめている。
その瞳に映る自分は、揺れていないだろうかと絵里はドキッとするが、絵里は困ったように笑った。

「だいじょうぶです。心配かけてごめんなさい」

入れ替わって初めての仕事だった今日だけでなんど、メンバーに「大丈夫?」と声をかけられただろう。
その度に、絵里はなんども「寝不足です」「だいじょうぶです」と返すのだが、それでも彼女たちはなにかしらの違和感を持っている。
それが要するに、衣梨奈への心配、メンバー間の絆なのかもしれないということは絵里でも分かっている。

今日だけでこんなに疑われて、今後も本当に大丈夫だろうかと思うが、進むしか道はない。
戻ったり、立ち止まったりしたところで、解決はしないのだから。

454 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:20:33.60 0
「えりな、今日はちゃんと寝ますっ」

そうして絵里はおどけたように笑い、帰り支度を進める。
さゆみもそれ以上は追及せずに、眉を少し下げたあと、再びケータイを手にした。
絵里はカバンを肩にかけ、「じゃあ、お先に失礼します」と頭を下げた。

「うん、お疲れさまー」
「はい、お疲れさまでした。田中さんにも、伝えていて下さい」
「おっけー。じゃあ、また明日ね」

笑顔で手を振るさゆみに絵里は思わず手を振り返しそうになってぐっと堪える。
軽く頭を下げ、楽屋をあとにした。
去っていくその後ろ姿を、れいなが軽く目を開けて追っていたことを、絵里は知る由もなかった。

455 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:21:07.18 0
絵里が家に帰ると、既に夕食は出来上がっていた。
衣梨奈が自作したハンバーグは、形がいびつであったものの、なかなかの味に仕上がっていた。
衣梨奈は家庭科の調理実習でつくったことはあるのだが、いざ他人の家のキッチンに立つと緊張した。
それでも衣梨奈は調理実習を思い出しながらハンバーグを完成させた。
多少焦げてはいたが、美味しいと感想をもらい、衣梨奈はホッとすると同時に嬉しくなった。

「明日はダンスレッスンなんですね」
「夕方には終わると思うから、そのあとに合流して、教えてあげるよ」

衣梨奈は自分でつくったハンバーグを食べながら「すみません」と返した。
絵里はその言葉に箸をいったん置き、衣梨奈に向き直った。

「すみませんはナシだよ」
「え?」
「えりぽんのせいじゃないんだし」

衣梨奈は、絵里が自分のことを「生田ちゃん」ではなく「えりぽん」と呼んだことにドキッとした。
絵里はと言えば、ニコッと笑いながら「みんなそう呼んでるしね」と返し、ハンバーグを放り込む。そんな絵里の態度に衣梨奈も笑顔で「はい」と返した。

「絵里も教えてほしいし」
「なにを、ですか」
「…はんどすぷりんぐ」

絵里の弱々しい言葉に衣梨奈はふふっと笑った。

「だいじょうぶですよ、すぐ出来ますって」
「いやいや、さっきテレビ見たけど、どう考えたって無理でしょ」
「えー、亀井さん運動神経いいし、いけますよ」

456 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:21:44.21 0
その無邪気な笑顔に絵里は背中に冷や汗をかいた。
先ほど、録画してあったおはスタを改めて見たが、あの「はんどすぷりんぐ」なるものは、どうも出来る気がしない。
どうして片手一本で人間がくるりと回転できるのか、絵里にはその原理も意味も分からない。
余計なものを特技だと言ったものだと、絵里は衣梨奈に理不尽な怒りをぶつけそうにもなった。

「ああいうのは感覚ですから」
「感覚でできるもの?!」
「はい」

嘘をつけ嘘をと思いながら、絵里はお茶で喉を潤した。
衣梨奈はニコニコしながら「だいじょうぶですってー」と気楽に話す。
ああ、どうか、暫くおはスタの仕事は来ませんようにと絵里が祈っていると、衣梨奈のケータイが震えた。
メールを受信したらしく、確認すると、衣梨奈の母親からだった。

「お母さん……」

メール画面を衣梨奈に見せると、彼女はそっとそう呟いた。
福岡から母親と一緒に上京し、ふたり暮らしをしている衣梨奈にとって、入れ替わってしまったこの生活は苦痛より寂しさの方を感じていた。
仕事をしていても、テレビに出ていても、衣梨奈はまだ中学生だった。
母親に会いたいという気持ちがあることは絵里にも分かっている。絵里は頭をかきながらどうするか考えた。

457 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:22:08.87 0
「今夜は絵里も帰るね。えりぽんのお母さんも、心配しちゃうし」

そうして絵里は返信を打とうとケータイを操作し始めた。
ちらりと見た衣梨奈の顔は、困ったように笑っている。その奥に寂しさが貼りついていることは一目瞭然だった。
絵里は「えりぽんの家って」と言葉を始めた。

「急に先輩が押し掛けても泊めてくれる?」
「え?」
「たまたま事務所に遊びに来た先輩と仲良くなって、もっと話したいから泊めても良い?って話はどうかな?」

そうして絵里が笑うと、衣梨奈の顔はぱあっと明るくなった。
衣梨奈は「お母さんそういうの大丈夫な人なんで、きっといけます!」と笑顔で言い放つ。
花が咲いたように笑顔で話す衣梨奈を見て、絵里もつられて笑い、「じゃあメールで聞いてみようか」と返信を打ち始めた。

458 :名無し募集中。。。:2011/12/24(土) 22:22:38.76 0
9期メンバーにも、同期の6期メンバーにも微妙な違和感を覚えられた。
恐らく、リーダーの里沙もなんらかの違和感か心配を持っているはずだった。
こんな小手先の誤魔化しがいつまで効くかなんて自信も保障もはないけれど、それでも前に進むしかない。

―絵里の方が先輩なんだし、しっかりしないと

絵里はそう言い聞かせながら、衣梨奈の母親に返事を出した。
すると3分も経たないうちに「良いですよー。ご飯は食べた?」と返信があった。
衣梨奈の優しい顔を見ながら、絵里も笑顔で再びメールを作成し始めた。

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0ch BBS 2005-12-31