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【太宰】走れポメラニアン【小説】

1 :名無し募集中。。。:03/10/09 20:50
かいて

101 :あぼん用:03/10/10 13:43
 ふと耳に、潺々(せんせん)、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。
よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々(こんこん)と、何か小さく囁きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにポメラニアンは身をかがめた。
水を、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。
斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている馬があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている馬があるのだ。
私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! ポメラニアン。

102 :あぼん用:03/10/10 13:47
 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。
ポメラニアン、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。
ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な雄であった。正直な雄のままにして死なせて下さい。

103 :あぼん用:03/10/10 13:53
 路行く人を押しのけ、跳ねとばし、ポメラニアンは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駆け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、猫を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。
一団の旅人と颯っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。
急げ、ポメラニアン。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。ポメラニアンは、いまは、泥まみれであった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。
見える。はるか向うに小さく、アザブの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。
「ああ、ポメラニアン様。」うめくような声が、風と共に聞えた。


104 :あぼん用:03/10/10 14:01
「誰だ。」ポメラニアンは走りながら尋ねた。
「さえぐさとものりでございます。貴方のお友達まきばおう様の厩務員でございます。」その若い厩務員も、ポメラニアンの後について走りながら叫んだ。
「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」ポメラニアンは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。


105 :あぼん用:03/10/10 14:07
「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。
あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。
会長が、さんざんあの方をからかっても、ポメラニアンは来ます、とだけ答え、強い信念をもちつづけている様子でございました。」
「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。命も問題でないのだ。
私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! さえぐさとものり。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」
 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、ポメラニアンは走った。ポメラニアンの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。
ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、ポメラニアンは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。


106 :あぼん用:03/10/10 14:11
「待て。その馬を殺してはならぬ。ポメラニアンが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」
と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて嗄(しわが)れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。
すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたまきばおうは、徐々に釣り上げられてゆく。ポメラニアンはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。ポメラニアンだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧(かじ)りついた。
群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。まきばおうの縄は、ほどかれたのである。


107 :あぼん用:03/10/10 14:21
「まきばおう。」ポメラニアンは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
 まきばおうは、すべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くポメラニアンの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み、
「ポメラニアン、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

「前足でもいいですか?」

「いや、拳で頼むよポメラニアン」

「オレ、犬だし」

会長・群集「ズコーッ」

>>27より

108 :あぼん用:03/10/10 14:21
>>27より

109 :名無し募集中。。。:03/10/10 14:47
 
     ミ\__/ミ 
      (゚∀゚ ヾ  
       uu_)@


110 :あぼん用:03/10/10 14:50
「まきばおう。」ポメラニアンは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
 まきばおうは、すべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くポメラニアンの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み、
「ポメラニアン、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
 ポメラニアンは前足に唸りをつけてまきばおうの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。


111 :あぼん用:03/10/10 14:55
 群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。暴君キヤマザは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二匹に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
 どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、会長万歳。」
 ひとりの少女が、緋のタオルをポメラニアンに捧げた。ポメラニアンは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「ポメラニアン、君は、泥だらけじゃないか。早くそのタオルで拭うがいい。この可愛い娘さんは、ポメラニアンの泥だらけの体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
 勇者は、ひどく赤面した。

                      《(古伝説と、シルレルの詩から。)書かれた走れメロスから。》 


112 :あぼん用:03/10/10 15:14
スレタイ通りとはいえ、スレ汚しスマソ
後半はNGワード用にコテにしたんで目障りならあぼーんしてくれ
29で終わりにしようかと思ったが、気持ちが悪いので最後までやった
なんか中途半端で悪かった
メロス自体好きだから、あんまり変えたくなかった
メロス以外は書いてない

って、誰もいないか
あばよ

113 :名無し募集中。。。:03/10/10 17:08
 
     ミ\__/ミ 
      (´<_ `ヾ  
       uu_)@

114 :名無し募集中。。。 :03/10/10 17:13
いまはただその一事だ。走れ!メロス。

ここがいいね

115 :名無し募集中。。。:03/10/10 17:20
>>96-97,100の辺りに筆者の真意が隠れているように思う

116 :名無し募集中。。。:03/10/10 19:19
||ハ||
||-^||<・・・・
||⊂||
||uu||

117 :名無し募集中。。。:03/10/10 19:49
規制age

118 :名無し募集中。。。:03/10/10 20:41
分け入っても分け入ってもポメラニアン

119 :名無し募集中。。。:03/10/10 20:50
へうへうとしてポメラニアンを味ふ

120 :名無し募集中。。。:03/10/10 23:11
そこで怪しい気配に気付き、ポメラニアンは辺りを見回した

121 :名無し募集中。。。:03/10/10 23:57
するとどうだろう、にわかに空には暗雲垂れ込め、
行き交う人々の顔色が一瞬にしてこわばっているではないか

と、ポメラニアンは声に出して呟いてみた

122 :名無し募集中。。。:03/10/11 01:02
ポメラニアンとあっちむいてホイしてみた
何回やっても俺が勝ってしまう
そう、ポメラニアンは俺の意思を読み取ろうと
全霊をもって俺の指先に集中している
全能の神は彼に純粋な思慮だけを与え
その他雑多なものは俺の脳髄に流し込んだ
指先を見つめる彼の澄んだ瞳には
灰色の俺が小さく歪んでいる
今夜、君には鶏のササミ肉を与えよう
出涸らしのコーヒー豆の粉末とともに

123 :名無し募集中。。。:03/10/11 01:28
もう二度と、この衣装は着るまい・・・
そう思いながら、ポメラニアンはきぐるみを脱いだ

124 :名無し募集中。。。:03/10/11 09:09
ついにポメラニアンは自分の意志で動き始めた。

もう誰もヤツに首輪をつけることなどできはしないのだ。

125 :名無し募集中。。。:03/10/11 09:11
昭和ポメリズム宣言

126 :名無し募集中。。。:03/10/11 12:49
自我を持ち始めたポメラニアンは次々と娘達に襲いかかった。

127 :名無し募集中。。。:03/10/11 14:20
「二匹のポメラニアンが鉄格子の檻から外を眺めたとさ――。
   
       一匹は餌を見た。一匹は星を見た。」


128 :名無し募集中。。。:03/10/11 19:16
ホゼラニアン

129 :名無し募集中。。。:03/10/11 20:00
ノンシャランのポメラニアンがやってもーた

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