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週刊ウルフ創刊号
254 :
大神羊太郎
◆LTvvPcKs0.
:2008/01/14(月) 03:01:21.82 0
1−A面
人工のライト煌めく月下の夜。
「Ah 本当の恋 わからぬまま あなたとはあれで終わるの・・・・・・」
そっと歌を口ずさみながら、女はライフルを構えた。
眼前には警備兵が10人余こちらへ銃口を向けているし、背後は雲海が足下にのぞいている。
「ただちに投降せよ」
「孤独なんて皆同じと教えてくれた人・・・・・・」
届く勧告にも女は耳を貸さない。
ひたすら歌い続け、着込んだ黒いコートを揺らすばかりの相手に、
痺れを切らせた追手は発砲許可をおろそうとした。
その直前、衝撃が建物を揺らした。
唐突の事態に脅える追手どもは伏せるばかりだが、女は平然と立っている。
見れば、女の両足はすでに20m弱の人型メカの腕にあった。
追手どもは言葉を失った。
「――バカやろう」
女は最後に弾みのある歌声を添えてからロボットへ乗り込み、飛び立った。
「じ、巡洋艦を追っている部隊に連絡! ただちに別れて捕捉せよと!」
色を失う兵卒の、慌ただしい指示が駆けめぐる。
(B面へ続く)
255 :
大神羊太郎
◆LTvvPcKs0.
:2008/01/14(月) 03:02:40.29 0
1−B面
落下音が轟いたのは、明け方のこと。
遠くから微かに聴こえただけなので、この辺境の町の住人で音に気づいた者は一人だけだ。
「なんだろう」
着古したぼろのパジャマを着た少女は、枕もとの眼鏡をかけてから、抜き足差し足部屋をあとにする。
それから家を出て、隣接する教会のまえで、曙光を待つ屋根の十字架を仰いだ。
何も考えず外へ来てしまってから、寒さを思い知る。
上着を取りに踵を返す。
「早いじゃない」
「あっ」と声を上げる少女、逞しげな若い女が立ちふさがっていたからだ。
「ママ、あの、音が」
「せっかくだしお手伝いしてくれる?」
“ママ”と呼んだ女の、母性を含んだ笑みに少女は弱い。
仕方なく言うとおりに従う少女だが、頷きは諦めまじり。
(もっと陽がのぼってからから見にいこう)
朝食の準備をする少女はたどたどしい。
ママは横目で心配しながらスープをかき回していた。
生白く大人しい少女はいじめの格好の標的で、学校でも、彼女を養う孤児院でも状況は変わらなかった。
少女のいじめられる要素は趣味にもあった。
「昨日ダニがまたジャンク屋漁ってた」
「機械いじりばっかしてるから暗いんだよ」
孤独な少女の慰めが、昂じていじめを誘っていた。
蔑視と罵倒を背に受けながら、ダニ扱いされながら、少女はチャイムを待った。
『To Be Continued...』
201KB
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