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ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘)

615 :名無し募集中。。。:2011/12/26(月) 18:58:05.86 0
>>530つづきです


「えりぽん、そこワンテンポ遅い」
「あ、はい」
「うん、じゃもう1回いくよ」

絵里はいま、衣梨奈とともに生田家でダンスレッスンをしていた。
衣梨奈の母親は、衣梨奈、外見は亀井絵里の衣梨奈をすっかり気に入ったのか、アッサリと家に上げた。
そりゃ自分の娘なのだから当たり前かと思いつつも、衣梨奈は頭を下げて生田家に入る。

名目上、衣梨奈のダンスレッスンに付き合ってくれている先輩の絵里という構図なのだが、傍から見れば全くの逆だった。
先輩の絵里に対し教えている衣梨奈など、だれかに見られてはまたややこしくなるのは確実だった。

「もっとこう、パン、パンって動き止めると綺麗に見えるから」
「こう、ですか」
「そうそう。次の動作に遅れないようにね」

絵里の指導に、衣梨奈も必死についていく。
絵里の体に入っている以上、衣梨奈はダンスレッスンに参加はできないが、此処で休むわけにはいかない。
衣梨奈は鏡を見ながら、指先の細かい動きまで頭に入れていく。

616 :名無し募集中。。。:2011/12/26(月) 18:58:38.91 0
そのとき、部屋がノックされ、扉が開いた。

「おつかれさまー。お茶でも飲む?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「こら、先輩が先っちゃろ」

入って来た衣梨奈の母親に絵里、外見は衣梨奈の絵里が窘められる。
ああもう、ややこしいなあと思いながらも、衣梨奈はグラスを受け取った。

「衣梨奈、どうですか?」

お茶で喉を潤すと、母親から質問を受けた。
受けているのは当人の衣梨奈なのだが、さてどう答えたものかと思考を巡らせているのが分かる。
これはさすがに助け舟を出すかと絵里は息を吐いた。

「がんばってるっちゃよ!」
「ホントにぃ?あんたは亀井さんに迷惑かけとらん?」

苦笑しながら答える母親に対し、衣梨奈も口を挟む。

「あ、いえ。私は…だいじょうぶですから」
「そうですか?この子、そんなにダンスは得意じゃないんですけど、宜しくお願いします」

そうして母親は一礼すると部屋をあとにした。

617 :名無し募集中。。。:2011/12/26(月) 18:59:12.84 0
絵里は、何処の母親も同じだなと思うと同時に、本当に衣梨奈は愛されているのだなと実感する。
モーニング娘。に加入し、福岡から母親と一緒に上京して来た衣梨奈。
芸能界という、一般社会とは少し違う特殊な世界に入り込んだ娘を心配しない母親はいない。
軽口を叩いていても、ちゃんと見守っているのだなということは痛いほど分かった。

「すみません、お母さん、心配性なんで…」
「いや、素敵なお母さんだと思うよ、絵里は」

そうして衣梨奈に笑顔を向けると、ふと自分の母親はどうしているか気になった。
衣梨奈の話によると、昨夜、絵里の両親は家に帰って来たようだった。
特に怪しまれることなく時間を過ごし、今日此処に来たと衣梨奈は言っていた。
こんな歳になってホームシックなんてあり得ないが、なんとなく、母親に会いたくなった。

「つづき、する?」

ふと頭によぎった考えを振り払うように言葉をかけると、衣梨奈も残りのお茶を飲み干し、「はい」と立ち上がった。
「じゃあ、頭からもう1回ね」と絵里はリズムを取り始めた。

618 :名無し募集中。。。:2011/12/26(月) 18:59:54.21 0
「なんで入れ替わったんだと思いますか?」

ダンスレッスンを終え、今度は「ハンドスプリング」とバトンの練習のために、ふたりは近所の公園へと歩いた。
その道すがら、衣梨奈から唐突にそう聞かれ、絵里は「うーん」と声を出す。
それは昨日も考えていたが、結局頭の許容量を超えたので考えないようにしていたことだった。

「たまたま、ですかね?」

昨日も考えていた。
この入れ替わりは偶然なのか、必然なのか。
必然だとしたら、なぜ絵里と衣梨奈だったのか。その理由はなんなのか。

「偶然だと思う」

絵里は頭を振りそう言い放つ。

「たまたまふたり揃って階段から落ちて、なんかのはずみで入れ替わったんだと思う」
「……そんなことってあり得ますか?」

衣梨奈の質問に絵里は一瞬、眉を顰める。
あり得る・あり得ないの議論をしている場合ではないのだ。
いま、現実に絵里と衣梨奈は入れ替わっているのだから、この現実を受け入れる以外に方法はない。

「だって、普通、あり得ないですよ。人が入れ替わるって漫画じゃないですか」
「…そうは言っても、絵里はえりぽんだし、えりぽんは絵里じゃん」

絵里自身の声が冷たくなっていることは自覚していた。
だが、それを柔らかくすることはどうしてもできない。

619 :名無し募集中。。。:2011/12/26(月) 19:00:43.62 0
「それは分かってますけど…戻りたいじゃないですか…やっぱり」
「絵里だってそうだよ。早く自分の体に戻りたい」

戻りたいし、返したい。
体だけではなく、モーニング娘。9期メンバーである生田衣梨奈としての生活を。
いまのままで良いなんてことはない。彼女の焦りも分かる。

「練習も必要ですけど、戻る方法も考えた方が…」
「じゃあ、えりぽんは分かったの?その戻る方法」

怒気を含んだ言い方になっているのは分かる。だが、止められない。

「それは…まだ」

絵里は苛立っていた。
この期に及んで弱気な衣梨奈に対してと、焦りを持っている絵里自身に対してだった。

「絵里はえりぽんにダンス教えたよ?でも、えりぽんは絵里にハンドスプリング教えてくれないの?」
「そ、そんなことは…」
「自分だけが練習できれば良いの?絵里だって練習しないと本番で失敗するの嫌だよ」

絵里の言葉に衣梨奈は言い淀む。
その瞳が揺れているのが分かるが、絵里の言葉のダムは止まらない。
せき止められていた想いが、不安が、急に溢れ出した。

「絵里はえりぽんの代わりに仕事してるんだよ。ホントはしなくても良い仕事なんだよ。絵里が休んでも、絵里には関係ないし」

ひどいことを言っているのは分かっている。
無茶苦茶で、理不尽で、非建設的な言葉だと知っている。
それでも絵里は吐き出してしまった。

620 :名無し募集中。。。:2011/12/26(月) 19:01:19.34 0
3日間の入れ替わりによって受けた仕事は撮影とダンスレッスンだけだった。
だが、その中で絵里は新たな環境に直面し、前へと進むメンバーと対面した。
休養という形でモーニング娘。を卒業した絵里にとって、前へと進むメンバーを見るのは苦痛だった。
自分だけが立ち止まり、里沙もさゆみもれいなも、どんどん先へ行くようで嫌だった。

自分が感じた不安や切なさを、こういう形で後輩にぶつけるのがどれほど卑怯なことかくらいわかっている。
絵里だってもう子どもじゃない。
モーニング娘。にいたころは中間管理職であったし、もしいまでも在籍していたらサブリーダーあたりにはなっていたはずだった。
後輩のために気を配るのがどれだけ大切かくらい、絵里にだって分かる。分かるのに、分かるのに、分かるからこそ…

「えりぽんには、絵里の気持ち分かんないよ!」

そうして絵里は走りだした。
後ろで「亀井さん!」と声が追いかけてきたが振り返る余裕はなかった。

入れ替わっても、絵里の脚は速かった。こういうところは魂の方が勝つのだろうかと思いながらも、絵里は走った。
生田家の近所はまったくの未知の領域であり、1本横に入ると、それこそ何処にいるか分からなくなった。
それでも絵里は止まらない。
方向音痴に定評はあるが、知ったこっちゃない。
絵里はその息が切れるまで、ただひたすらに走ってやろうと思った。

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0ch BBS 2005-12-31