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レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘)

525 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 18:37:51.84 0
>>509つづき

「衣梨奈ちゃん、今日なんか凄いね」

ダンスレッスンが休憩に入り、汗をかきながら腰を下ろすと、隣に里保が座り込んだ。
絵里は「なにが?」と息を整えながら手にしていたペットボトルの蓋を開けた。

「なんかいつもより……うまい…と思う」
「へ?あ、あー……練習したから、かな?」

絵里の言葉を聞き、里保はそっかぁと汗を拭きながら遠くを見つめる。
ダンススクール出身であるため、里保は9期メンバーの中でも、ひいてはモーニング娘。全体の中でもダンスの技術は高い。
そして、見た目によらず負けず嫌いだ。
それは本人も自覚済みだし、それが自分の長所でもあり短所だということも彼女は分かっている。
自分が13歳の頃、こんなに大人だっただろうかと絵里はぼんやり考えた。

「……やる」
「は?」
「練習する、私も」

そうして里保は汗を拭いて立ち上がり、レッスン室の端の方へと歩いていった。
ダンといちど脚で踏み込むと、ひとつに結んでいた髪が揺れた。
ひとつひとつの動作は機敏であり、リズム感も相当ある。絵里のように早取りのくせもない。

526 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 18:38:52.96 0
「…里保ちゃんの方がよっぽどうまいよ…」
「いやぁ生田もうまいよ」

急に降ってきた声に絵里はビクッと肩を上げた。

「そーんなに驚かなくてもいーじゃん」

そこにいたのは、モーニング娘。7代目リーダー、新垣里沙だった。
絵里の同い年・ツッコミというより小姑キャラ・先天的にはボケ体質・ガキカメは名コンビ、うん絵里もそう思う。
最近は衣梨奈とも仲が良く、一部では生ガキなんて呼ばれているらしい。

「なんかあった?」
「へ?」
「楽しそうに踊るからさぁ」

そうして里沙は笑いながら腰を下ろす。
その手にはいつものように栄養ドリンク剤。もうそのCMしたら良いじゃないですかと思いながらも絵里は「はぁ」と曖昧に返す。
里沙はドリンクの蓋を開け、喉を鳴らしながら飲んでいく。あ、CM来ますよ、その飲み方だったら。

「先輩になったから、がんばってる?」
「ん…んー、まあ…たぶん」
「なーによ、なんか生田らしくないじゃん。いつもみたいにKYキャラできてよー」

里沙が目を細めて笑い、絵里もつられて笑った。
この人は相変わらず、変わらない。
冗談も本気も、全部この人は素の自分をぶつけてくる。
深刻になりすぎず、かと言っておどけ過ぎず、ありのままの「新垣里沙」をぶつけるから、絵里も「亀井絵里」でいられた。
ガキカメで何年も一緒にラジオとかやってこれたのも、里沙が変わらず里沙、ガキさんだったからだ。

527 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 18:39:29.39 0

―優しすぎるんだよ、ガキさんは…

同期の高橋愛が卒業し、周りは後輩ばかりの空間になり、笑顔が少なくなってきてしまうこともあった。
里沙がリーダーになってから、絵里もなんどかメールで相談を受け、ふたりで話したことがあった。
もっと後輩を頼って下さい。絵里だけじゃなく、さゆもれーなも、みんながいますからって言ったら、ガキさんは笑ってくれた。
いまの里沙は、普通に笑っている。
それはひとえに、6期の力もあるだろうけど、KYキャラで場をなごませる衣梨奈の力があるからかもしれない。

―なんかねぇ、小春とカメを足して2で割ったような感じ

いつだったか、里沙は衣梨奈のことをそう表したことがあった。
そのとき、絵里は未だ、生田衣梨奈という存在をよく知らなかった。
里沙は衣梨奈を「もーホントにKYで手に負えない…うるさいし意味分かんないし、うん、KY」と話していた。
だがその表情はとても優しくて嬉しそうだった。

その笑顔に、なんとなく寂しくなったのは、内緒。

「はい、そろそろ始めるよ!」

ダンスの先生の声が響き、室内の空気が一気に変わった。
まったりとした優しさは消え、ピリッとした独特の緊張感が漂い、絵里も休憩モードからレッスンモードへ切り替えた。

528 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 18:40:16.15 0
レッスンが終了した途端、9期と10期メンバーはへとへとになり崩れ落ちた。
やはり経験の差か体力の差か、5期と6期の「先輩」たちは立っている。
衣梨奈の体のせいか、やはり多少の動きづらさや体力のなさは痛感した。人の体というものは厄介だなと改めて感じる。
しかし、暫くダンスはやっていなかったが、意外と体は覚えているし、ついていくことが出来た。
完全燃焼したといっても、やはり楽しいことは楽しいんだなと絵里は天井を見上げた。

それでも、寂しさは残る。
里沙も、さゆみもれいなも、此処にはいないけど休養中の愛佳も、絵里よりは何歩も先に行っている。
絵里が卒業したあの頃よりも、格段とレベルアップした同期の姿に、絵里は無意識に胸が締め付けられた。
時計を確認すると、午後の4時を回ったところだった。予定通りの時間に、絵里は早く帰ろうと腰を上げ、帰宅の準備を始めた。

着替えを済ませ、それぞれ帰っていくメンバーにまざり、絵里も「お疲れさまでしたー」とレッスン室をあとにしようとした。
が、それは後ろから追ってきた声に阻まれた。

「生田ぁー」

その声に振り返ると、そこには同期、6期メンバーの田中れいながいた。
急に話しかけられたことにドキッとしながらも、絵里は努めて笑顔で「なんですかぁ?」と返した。
もう少し間延びした声の方が良かっただろうかと思っていると、れいなは言葉を渡した。

「明日って空いとぉ?」
「あ、明日、ですか?」

れいなの突然の質問に動揺が走るが、それを悟られてはいけない。
絵里はドラマも舞台も経験している「女優」なのだから、生田衣梨奈を演じる必要がある。此処でバレるわけにはいかない。
だが、筋書きのない台本はどう転ぶか読めない。絵里はれいなの次の言葉を待った。

529 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 18:40:42.85 0
「モツ鍋食べに行かん?前に行きたいって言っとったやん」

れいなの言葉に絵里は揺れた。
モツ鍋?そんな話は衣梨奈から聞いたことがないが、衣梨奈はれいなにそう言ったのだろうか?
九州出身の衣梨奈が、関東でモツ鍋を食べたいから田中さん行きませんか?と話した?
いや、九州出身だからこそ、美味しいモツ鍋を久しぶりに食べたいと言ったのか?

「あー。でも明日はちょっと用があるんです。ごめんなさい」

絵里は迷った挙句、断るという選択をした。
衣梨奈がどういう約束をしたかは分からないが、此処で誘いに乗るにはあまりにもリスクが大きすぎた。
実際、明日は衣梨奈に今日のダンスを教え、「はんどすぷりんぐ」を教えてもらう必要がある。
とにかく断るのが最善だと絵里は考えた。

「そっかぁ。分かった、ありがと」
「あ、いや、私こそすみません。じゃあ、また」
「ん、おつかれー」

れいなの笑顔に頭を下げながら、絵里はレッスン室の扉を空けて廊下へと出る。
なんとか誤魔化せたと深く息を吐き、天井を見上げた。
帰ったら衣梨奈にちゃんと確認しようと、絵里は暫く歩き、外へ出たところで衣梨奈にメールを打ち始めた。

530 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 18:41:29.65 0
「珍しいね」

帰り支度を済ませ、れいなと肩を並べて廊下を歩くさゆみはそう言った。

「なんが?」
「れいながえりぽん誘うの。あんまり後輩とご飯とか行かないじゃん」

さゆみの言葉にれいなは大袈裟に肩を竦めた。
「たまには先輩らしいことしてみよっかなって」と言いながら、れいなは帽子を深めにかぶり直す。

「えりぽんモツ鍋食べたいって言ってたんだぁ」
「……さあ」

れいなの言葉にさゆみは振り返る。れいなは大きめのサングラスをつけているため、その瞳が見えない。
そう言えば、表情をつくらなくて良いからサングラスをかけているのだと、いつかのコンサートで話していたことをさゆみは思い出す。
まさかこんなときに役に立つとは思わなかったと、さゆみはその表情を見ることを諦めた。
さゆみはふうと息を吐いて外に出る。夕陽が沈みかけ、街はオレンジ色に染まりはじめていた。
ああ、絵里の色かあと思っていると、隣にいる同期が「絵里も見とぉやろうか?」と呟き、サングラスを外した。
その瞳は真っ直ぐで、沈みかけている太陽をじっと見つめている。

「見てるんじゃない?……いや、見てたんじゃない?」

クスッと笑うさゆみの言葉にれいなは反応するが、目を合わせることなくサングラスを掛け直した。
まさかねと、あり得ないと考えていたが、心の奥に引っ掛かっている“なにか”は、確かに消えることなくそこに残っていた。

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0ch BBS 2005-12-31