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ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘)

504 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 08:15:58.00 0
更新できるうちにしときます
>>458つづき

カーテンの隙間から光りが射しこんできて、絵里はふと目を覚ました。
ベッドの上でグッと伸びをしたあと、時計を確認する。まだダンスレッスンまでの時間はあるので二度寝しようかと考える。
温もりを求めて毛布を被ろうとし、やはり期待をこめて鏡を見つめる。
だが、相変わらず向こう側にいるのは、寝ぼけて目がまだ開ききっていない生田衣梨奈そのものだった。
こうやって期待と落胆を繰り返す朝をあとどれくらい迎えれば、絵里と衣梨奈は戻れるのだろうかとぼんやり思った。

絵里は朝から溜息をつきそうになり、来客用の布団で眠る衣梨奈を見る。
本当に彼女はよく眠っている。昨日も考えたのだが、それは万年寝不足という絵里の体のせいなのだろうか?
確かに衣梨奈の体に入ってからというもの、夜寝る時間と朝起きる時間は早くなっている。
精神よりも肉体の方に感覚は引っ張られていくものなのかもしれない。
となると、いつかは肉体の方に精神もどうかしてしまうのではないかと心配になるが、いまそれを悩んでも仕方がない。

―戻る方法……あるよね…

確証も保証もなかった。
だから絵里は、ただ必死に信じるしかなかった。
ただ安らかに眠る衣梨奈を守れるのは、事実を知っている自分しかいないのだから。
そこまで思考を進めたとき、不意にやって来た眠気に耐え切れず、絵里は瞼を閉じた。

505 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 08:16:28.19 0
「ごめんなさいね、衣梨奈がベッド独占しちゃって」

朝食を摂りながら、衣梨奈の母親は衣梨奈、見た目は絵里である衣梨奈に対してそう言った。

「あ…あーだいじょうぶっちゃん。よく眠れたけん」

母親に聞かれた言葉に、衣梨奈は素直に返した。
その口調はいつも以上に柔らかくて舌っ足らずではあったが、衣梨奈の口をついた博多弁に絵里はドキッとした。

「あら、亀井さんも九州出身やと?」

ほらきた。母親の言葉に安心感を覚えたせいで、衣梨奈は思わず博多弁を喋ってしまった。
本物の絵里は生まれも育ちも東京。九州なんて縁が薄いのにどう切り返すか衣梨奈は焦った。

「か、亀井さん、衣梨奈と一緒に喋っとぉうちに、博多弁がうつってしまったっちゃん?」

絵里は慣れない博多弁を使って助け舟を出し、衣梨奈もそれに乗った。

「そーなんですよー。えりぽんの博多弁が心地良かったのでつい…」
「あらそうやと。なんか嬉しいっちゃねぇ」

そうして衣梨奈の母親は微笑みながら、野菜ジュースを飲み干す。
絵里と衣梨奈は視線を交差させ、ふうと息を吐いた。

506 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 08:17:07.68 0
「すみませんでした。さっき」
「あーだいじょうぶだよ。えりぽんもお母さんと話せて安心しちゃったんでしょ?」
「…はい」

ふたりは揃って生田家を後にした。
絵里はそのまま仕事場へ、衣梨奈はいちど亀井家に戻ることになった。
今日は絵里の両親が自宅に帰る日であり、話を合わせることに苦労しそうだが、避けては通れない道だった。

「だいじょうぶだよ。うちの両親アホだから」
「そんなことないと思いますけど」

絵里なりに緊張をほぐしてくれていることは衣梨奈にも分かったが、今朝の失敗からか、どうしても笑顔にはなれなかった。
見知らぬ大人に敬語を使わずに話すことなど出来るのだろうか。
相手は23年間も絵里を見続けてきた絵里の両親である。終日時間を過ごす中で、ボロが出ない訳はなかった。

「いざとなったら、絵里のアホキャラで通せばなんとかなるって」

絵里はそうして笑い、衣梨奈の頭を撫でた。
いまの衣梨奈の外見は亀井絵里であるが、この表情は、モーニング娘。に加入した当時の顔に似ているなと思った。
不安とか心配とか恐怖とか、そういう負の感情に押しつぶされそうになっている自信のない、亀井絵里。
私、どうやってあの頃から成長したんだっけ?と衣梨奈は思いながらも、強く衣梨奈の頭を撫でた。

「じゃあ、仕事終わったらまた連絡するから」

最寄駅に着いた絵里がそう言うと、衣梨奈は「はい。行ってらっしゃい」と手を振った。
その表情はまだ暗く、瞳も揺れていたけれど、これ以上は時間的にも余裕がなく、後ろ髪を引かれながらも絵里は駅の階段を上った。

507 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 08:17:49.78 0
元に戻る方法もさることながら、入れ替わったメカニズムの解明も必要だと絵里は考えた。
そもそも、人間の魂、あるいは精神が入れ替わることなんてあり得るのだろうか。

「幽体離脱」という言葉を聞いたことがある。
寝ているときや臨死体験で、自分の魂のみが肉体から離れ、自分の肉体を俯瞰的に見る事が出来るという話だ。
それが実際に実現可能かどうかは別として、そのメカニズムでいくと、今回の件も一応の納得はできそうだ。

だがそこで絵里は、いや、と思考を止める。
幽体離脱で魂が肉体から離れたとしても、それが別の肉体に定着することは可能なのだろうか?
今回の場合、絵里と衣梨奈は階段から落ちたことによって、強い衝撃を受け、一瞬臨死状態に陥った。その際、魂が肉体から飛び出た。
うん、此処まではなんとなく分かる。
だが、それで魂が互いの体に入り、そのまま目を覚ますということは可能なのか?

もともと別の“容れ物”であるのに、そう簡単に違う魂と肉体は接着できるのか?
この考えでいくと、絵里も衣梨奈も、お互いの肉体があっさりとお互いの魂を受け入れたということになる。
それこそ「拒絶反応」のようなものは起きそうなものだが…と考える。

臨死状態や幽体離脱の場合、自分の肉体を俯瞰的に見るというケースが多いが、今回はそうではない。
そうなると、階段から落ちた衝撃で、互いの魂がなんらかの理由で混在し、容れ物を間違えたということになる。
普通、そう簡単に混在し、入れ替わったりするものだろうか。
この仮説が正しければ、世界中で入れ替わり現象が起きそうなものだが……

508 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 08:19:39.14 0
「絵里頭良くないんだって……」

中学生の頃にモーニング娘。に加入し、授業中はほぼ寝ていた絵里は勉強は得意ではない。
集中力の欠如に定評のある絵里にとって、こんな無理難題をよくも20分も考えられたものだと逆に褒めてやりたくなった。
絵里の頭は完全に要領をオーバーし、ともすればショートを起こしそうになっていた。
これ以上の思考は今日のダンスレッスンに支障をきたすと判断し、絵里は頭を振って「はぁ」と椅子に横になった。

絵里はダンスレッスンの部屋のすぐ近くにある簡易休憩所に来ていた。
思いの外に乗り換えがうまく行ったせいか、此処に来たとき、レッスン室を覗くと、室内にはまだだれもいなかった。
時間を潰そうと休憩所へと向かい、自販機でオレンジジュースを買ったところで、絵里は元に戻る方法、入れ替わった方法を考え始めていた。
そして20分が経過し、すっかり温くなったオレンジジュースを再び飲んでいる。

「なーんで入れ替わったんだろ…」

そこで絵里はふと気付いた。
いまのいままで、絵里は入れ替わった方法、メカニズムを考えていた。
しかし、絵里と衣梨奈の入れ替わった“理由”を考えたことはなかった。
ふたりが入れ替わった理由、なぜ絵里と衣梨奈だったのか、なぜこのタイミングだったのか。

509 :名無し募集中。。。:2011/12/25(日) 08:20:04.09 0
「たまたま…?」

ふたり揃って階段から落ちた。衝撃を受けた。なんらかの形で魂が抜けた。そして入れ替わった。
絵里が事務所に遊びに行ったのは偶然だった。そしてあの場にさゆみと衣梨奈がいたのも偶然だった。

だがそれが、必然だったとしたら―――?

ふたりが階段から落ちたのが偶然だったとしても、なんらかの理由で入れ替わる必要があったとしたら?

絵里と衣梨奈、どちらかの魂がだれかの肉体に入る必要があったとしたら?

なんで?
どっちが?
両方が?
なんのために?

「……バカバカし…」

絵里はすべての考えを呑み込むようにオレンジジュースの缶を傾けた。
入れ替わる理由に必然性があったなんて、それこそ非現実的すぎる。
幽体離脱説を採用するなら、それこそ必然性なんてない。
だが、もし、必然性を採用するなら、入れ替わったのは……

「……かみさまの力とか?」

あり得ないと頭を振る。
神様の存在を信じる信じないは別にしても、いくらなんでも考えが飛躍しすぎている。
今日はどうも思考の沼に嵌ったようだと、オレンジジュースを飲み干し、席を立った。
そろそろ行かないとレッスンが始まるなと絵里は急いでカバンを持ち、レッスン室へと走った。

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0ch BBS 2005-12-31