スレ大杉なんで2chブラウザ推奨

これ参考にがんばって!!1 → 板追加手順

■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 最新50


レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘)

359 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:53:41.46 0
>>208つづき

絵里は瞬間、パッと目が覚めた。
「んー?」と頭をかきながら体を起こし、時計を見る。
4時18分という表示を見て、わおと思わず声を出した。なんでこんな早い時間に起きたんだ私と思って二度寝しようと布団に潜り込む。
しかし、数秒後に思い立ったように姿見に顔を映してみた。相変わらず、鏡の中に居るのは、生田衣梨奈であって亀井絵里ではなかった。

「そう簡単にはいかないよなあ……」

絵里は苦笑しながら天井を仰いだ。
もし、もし本当に一生このままだったらと嫌な考えがまとわりつく。
入れ替わって今日で2日目。きっかけもなにもなく、朝起きたら元に戻っていたなんてことはたぶんあり得ない。
だが、そうであっても、どうすれば元に戻れるのだろう。
そもそも、どうしてふたりが入れ替わったのかすらその原理も分かっていないのに、戻るのなんて余計に難しい気がした。
逆に言えば、入れ替わったメカニズム、あるいは理由が判明すれば元に戻れるかもしれない。

しかし、そうは言っても、入れ替わる直前、ふたりは階段から落ちたことしか覚えていない。
階段から落ちて気を失っている間に、自分の体から魂が抜け出て相手の体に入った……悪くない理論だ。
いや、破綻している。あれ、破綻ってあってるっけ?ん、そもそもなんの話だ?

360 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:55:06.02 0
「……やめよ」

朝から考えても仕方のないことだった。
現実に、絵里は衣梨奈のままで、衣梨奈は絵里のままなのだから、と、相変わらず安らかに眠っている衣梨奈を見た。

「かわいいなぁ」

普段仕事でテレビに出たりコンサートをしているといえど、中身はまだまだ中学生。
寝顔も寝相も、中学生そのもので、絵里は優しく微笑みながらずり落ちている毛布を掛け直してやった。
ふうとひと息つき、今日の予定を反芻した。
今日は衣梨奈の話によると、終日メンバーと撮影らしい。普段の絵里であるならば、集合時間を考えても、もう少し眠れるのだが、今日はそうもいかない。
絵里はぐっと伸びをして立ち上がった。

361 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:56:26.86 0
準備をしていると、自宅を出る時間はあっという間にやってきた。
絵里はカバンに自分の財布と、悪いと思いながらも衣梨奈のスケジュール帳とケータイを入れた。
財布はともかく、このふたつは彼女の物を借りないことにはどうしようもない。
ひとこと断ることができたら良いのだが、肝心の衣梨奈はまだ夢の中だった。

昨日から思っていたが、本当に彼女はよく寝ている。相当疲れているのか、それとも絵里の体のせいなのか、それは判断しきれない。
とにかく、この寝顔で起こすのは忍びなく、絵里は書き置きの横に合鍵を置き、仕事に行くことにした。
朝の街を帽子を深めにかぶり歩いていく。
この感覚は実に1年振りだなと思いながら、絵里は最寄駅を目指した。

362 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:57:09.56 0
楽屋の前に立ち、絵里は大きく息を吐く。
集合時間の30分前に着くなんて、卒業前にあっただろうかと苦笑するが、いまの絵里は9期メンバーの生田衣梨奈であった。
一応の気を遣って早めに到着してみたが、既にだれかいたらなんて話せば良いだろう。
同期、9期メンバーの残り3人で絵里がまともに話したことがあるのは、エッグに加入していた譜久村聖だけだった。
高橋愛の卒業コンサートで9期メンバーとは会ったが、そのときは特に深く話すことはしなかった。
今日がほぼ初対面だというのに、知り合って1年も経つ仲良しトークなんて展開できるのかと頭が痛くなった。

「あ、おはよー衣梨奈ちゃん」

後ろから走ってきた声に絵里はびくっと肩を上げた。
声の方向に視線を送ると、そこには髪を横でひとつに括った「同期」である鞘師里保が歩いて来ていた。

「お、おはよう、里保ちゃん」

絵里は出来るだけ不自然にならないように返事をした。
彼女が楽屋前に歩いてくるまでのほんの数秒の間に、知っている限りの「鞘師里保」の情報を整理した。
広島県出身・ダンススクールに通っていたのでダンススキルに定評あり・寝起きはよくない・道重さゆみのお気に入り・りほりほ。
ロクな情報ないなと思っていると、「入らないの?」と聞かれる。
絵里が曖昧に笑って誤魔化していると、「変な衣梨奈ちゃん」と笑い、ドアノブに手をかけた。ああ、まだ心の準備が!と思っているうちに、扉は開いた。

363 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:57:42.85 0
楽屋内には幸いなことにだれもいなかった。
だが、そこにはカバンがひとつ置いてあり、その持ち主を絵里は知っていた。
里保は不思議そうな顔をしながらも楽屋へと入り、絵里もそのあとに続く。

「…衣梨奈ちゃん、疲れてる?」
「へ?な、なんで?」
「なんかすごい挙動不審だし」

おお、最近の中学生は挙動不審という単語を知っているのかと感動しながらも、絵里は「ちょっと寝不足なだけ」と返した。
その言葉は嘘ではない。衣梨奈の体に入ってからというもの、絵里の眠りは浅かった。
最初は、他人の体に入ったことで動揺したせいだと考えていたが、今朝の4時起きで絵里はなんとなく分かった。
朝の番組を始めたことで、衣梨奈の体は習慣として早めに起きるようになっているのだと。
体内時計がそうセットされたことと、仕事のストレスにより心身の状態が不安定になり、それで余計に眠れないのかもしれない。
中学生ながらに芸能界に入った宿命と言えばそこまでだが、少し彼女は休みが必要かもしれないと絵里は思った。

「おお、今日は早いねえふたりともぉ」
「りほりほー、えりぽーん、おはよーなの」

そのとき、楽屋の扉が開かれ、口うるさい2人が入って来た。
1人は絵里の同期である道重さゆみ、そしてもう1人は、カバンの持ち主、新垣里沙だ。彼女の手には栄養ドリンク剤が握られている。
里保と絵里はほぼ同時に立ちあがり、「お早うございます」と挨拶した。
うわぁ、先輩に挨拶したのって何年振りだろう。昔からそんなにやってたわけじゃないけど、と苦笑する。

「りほりほは今日も可愛いの〜」

364 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:58:13.69 0
そうしてさゆみはケータイを取り出し、里保にフォーカスを合わせた。
相変わらずこの人は里保が好きなんだなと肩を竦めると、「ホントさゆみんは鞘師が好きだねぇ」と苦笑いしながら里沙が言った。

「ドストライクですからね」
「言い方がマジだから」
「マジですよ、大マジ」
「さゆみん怖いから。鞘師引いちゃってるから」

里沙とさゆみの掛け合いに、絵里は思わず頬が緩んだ。このやり取り、ホントに懐かしいなあと思う。
卒業後もご飯に行ったり遊びに行ったりはよくするのだが、現場で見せる何気ないひとコマに、娘。に居た頃をふと思い出す。

「なぁに笑ってんのよ生田ぁ」

里沙に笑いながらそう振られ、絵里はなにも考えずに「うへへぇ、なんでもないです」と笑った。

「おはよーございますっ!」
「鈴木うるさーい」
「元気が大事じゃないですか、朝だから」

明るい声とともに入って来たのは、鈴木香音だった。
いつもニコニコ笑っているイメージ・虫のモノマネ・なんだかんだで可愛い・意外と常識人…ああ、なんでこんな情報しかないの私……

「あれ、えりぽんさぁ」

すると目があったのか香音は里保と絵里に近づいてきた。

「なんか、あった?」
「へ?」
「いや、なんか暗いし」

365 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:58:39.13 0
そんなに顔に出ているのかと絵里は思わず両手で顔を押さえた。
舞台やテレビで女優の経験もあるのに、なぜこうも上手く演技できないのかと頭を悩ませる。

「やっぱ香音ちゃんもそう思う?」
「え、里保ちゃんも思った?」
「なになに、生田なんかあったの?」

香音と里保の疑問に、今度は里沙まで乗って来た。
まずい、このままでは話が膨らみすぎてしまうと、絵里は大きく手を振って否定しようとするが、間髪入れずに里保が話す。

「悩みなら聞くよー。神様もいるし」
「そう、私は神様」

里保の言葉に乗っかった香音は腰に手を当て、「えへん」と咳払いをし威張ってみせる。
そうだ、この人神様だったっけと絵里は頭を抱えるが、とにかく此処は誤魔化そうと「ちょっと寝不足なだけだよー」と笑った。
するとさすがにそこで追及は終わり、心配そうな顔は見せながらも、香音は笑った。
里沙とさゆみも9期のやり取りを見て大丈夫だと判断したのか、それぞれのメイク台へと移動した。

たったこれだけのことでこんなに動揺して大丈夫だろうかと不安になっていたそのとき、絵里のカバンの中のケータイが震えた。
思わず肩を上げたあと、ディスプレイに表示された名前を見て、絵里は「わお」と声を出す。
絵里は「ちょっと電話でてきます」とひと言残し、楽屋をあとにした。

366 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:59:08.34 0
「もしもし?」
「あ、もしもし…あの…えっと、か、亀井さん……ですか?」

果たして相手は衣梨奈だった。絵里はふうと息を吐き、「おはよ、眠れた?」と聞いた。衣梨奈は申し訳なさそうに「すみません」と声を出した。

「やっぱ絵里の体だからかなー、万年寝不足だし仕方ないよ」

そうして絵里が笑っても、衣梨奈の声のトーンは落ちたままだった。
先輩を仕事に行かせたうえ、見送りもできずに寝ていた自分が不甲斐ないのだろうか、衣梨奈の謝る姿が目に浮かんだ。

「あと……朝ご飯も」
「ん?あー、いーよ。最近ハマってるし」

絵里は行きがけに軽く朝食をつくって来た。
味噌汁とベーコンエッグというアンバランスさは否めないが、それでも充分な出来だと言える。
衣梨奈は「あとでちゃんと食べます」と言った後に、「大丈夫そうですか?」と聞いた。

「んー…たぶん」

その質問にはそうとしか答えられなかった。
さすがに、早速違和感を覚えられましたよ、あなたの同期に。とは言えない。
だが、些細な変化に気づいたのは、やはり同期の絆なのだろうかと絵里はぼんやり思う。

「じゃ、絵里、仕事がんばってくるから、休んでてね」
「はい。終わったら連絡下さい」

そうしてふたりは電話を切った。
絵里はふうと廊下の天井を見上げる。真っ白い板が絵里を見下ろしている。その無機質さが「誤魔化せるのか?」と嘲笑っているようで絵里は頭を振る。
弱気になったってどうしようもないのだ。こんなときこそ「俄然強め」でいくしかないのだから。

367 :名無し募集中。。。:2011/12/22(木) 01:59:34.88 0
「なんしとーと?」

絵里がささやかな決意をした瞬間、その声は降って来た。
顔を向けると、そこには大きめのサングラスをかけた同期、田中れいながいた。

「れー…田中さん、お早うございます」
「ん、おはよ」

れいなは口を覆いながら大きなあくびをした。
シルバーのピアスに手には赤いブレスレット。ロングスカートには髑髏が描かれており、上着も紫色と、相変わらず「田中れいな」だなと思う。
そう考えていると、れいなは「んー?」と首を傾げた。
絵里がなんだろうと思っていると、れいなは絵里の間合いに入ってきて、下から絵里を覗きこんだ。
思わずドキッとして身を引こうとしたとき、れいなはそのサングラスを外し、大きな瞳に見つめられた。

「な、なんですか…?」

大きな瞳に見つめられて、嘘がつけなさそうになった絵里は咄嗟に言葉を返す。
れいなはといえば、暫く見つめたあと、再び大きなあくびをし、「れな眠いけん」と呟いて楽屋へと入っていった。
いったいなんだったのだろう、いまの行動はと絵里は眉を顰めたが、れいなに再び確認するほどの度胸はなかった。
絵里は頭をかきながら、楽屋へと入る。もうすぐ撮影が始まりそうだった。

314KB
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

0ch BBS 2005-12-31