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もしあいぼんがまろやかなロマネコンティだったら2
194 :
名無し募集中。。。
:2005/08/19(金) 22:47:10 0
半ば押し込まれるようにして乗り込んだ車の中は
長時間蒸し暑い室内にいたせいで火照っている体を程よい冷気で冷ましていく。
手首に巻かれた鎖がチャリ、と音を立てる。
俺の住んでいたチンケな日常とこれから歩むであろう犯罪者としての日常を隔てる
あまりに小さな、だが重厚な音だった。
「自分のしたことは分かっているな」
俺を押し込んだ刑事が左隣に座りながら言う。
剣を含んだ居丈高な言い方が気に障ったが言い返す事などできない。
俺は惨めな負け犬のチンケな犯罪者で彼は正義の公僕。何を言えというのだ。
「おい、出してくれ」
動き出した車の振動を感じながら酷い脱力感とこれから待ち受けるであろう苦痛と
将来への不安が襲う。くそ、こんなはずじゃなかったのに。
195 :
名無し募集中。。。
:2005/08/19(金) 22:48:06 0
『なぁ、俺たちに親はないがこうして一緒に酒を飲む仲間がいる。何かあったら俺を頼れ。
親のようにはできないかもしれん。が、こうして酒くらい奢ってやる』
俺が二十歳になるかならないか、親のない子ばかりを集めた小さな施設の、
わずかに三つ四つばかり年上のそいつが兄貴風を吹かせて奢ってくれた酒の味。
喧嘩で切った口の中に広がる甘みと痛みに誓ったはずの俺の決意は
一体どこで狂っちまったんだろう。
「久しぶりだな・・・」
ずっと車の中にいた右隣の男が不意に呟いた。
街灯の少ない田舎道を進む車の中はぼんやりと薄暗く顔は見えない。
だが聞き間違えるはずがなかった。
「あんたは・・・」
「憶えてたか」
驚愕する俺に郷愁とも同情とも取れるような声が返ってくる。
こんな恥辱が待っているとは俺の人生はなんてツイてないことばかりなんだろう。
196 :
名無し募集中。。。
:2005/08/19(金) 22:49:07 0
「・・・ずいぶんな出世じゃないか、ええ?
一緒になって酒とケンカに明け暮れててよくお勉強ができたもんだ」
やめろ。
こんな惨めな姿を見られた上に牙のない歯で噛み付いてどうしようって言うんだ。
そう思うが俺の卑屈な当てこすりは留まることを知らない。
関を切ったように喚き散らした。
「ちきしょう、あんたがこんなに出世してるんなら
さっさとタカリにいっときゃよかったな」
「ああ、俺もお前が来るのを待っていた」
ヤツは昔のような静かな声で言った。
「俺を頼らないって事はそれなりに上手くやってるんだとばかり思っていたんだがな。
・・・なぜ来なかった?」
行こうと思った。だがいけるはずがなかった。
颯爽とカッコよく前へ進むあんたに
惨めにもがいて日々の生活に足掻く自分の姿を見せたくなかった。
そんな足掻きを繰り返して、小さな失敗を積み重ねて、
取り返しのつかないところまで来た頃にはもう会うに会えなくなっていた。
197 :
名無し募集中。。。
:2005/08/19(金) 22:49:58 0
「俺は・・・馬鹿なんだ」
決して泣くまいと思った。
せめて男の意地としてみっともなく泣く事はすまいと。
「ああ、お前は馬鹿だ」
ぽん、というには力強い重さで俺の頭の上にヤツの手が乗せられる。
「だが、どんな馬鹿でも俺の弟分だ。血より濃い『あいぼん』で杯を酌み交わした弟だ」
ああ、あの日呑んだ酒の名前は「あいぼん」だったか。
不意に色んな事が思い出されて、俺は歯を食いしばった。
「・・・良い事なんて何もなかった」
親に捨てられ、大人に疎まれ、社会に疎外され、信じる者は皆去っていった。
たった一人、親とも兄とも同志とも思っていたヤツの前ではこんなにも情けない姿を曝して。
198 :
名無し募集中。。。
:2005/08/19(金) 22:51:22 0
「大丈夫だ」
こみ上げてくる怒りや恨みを宥めるように静かなヤツの声が届く。
「何もないなんて事はない。俺が居るじゃないか。『あいぼん』があるじゃないか」
静かな車内でヤツの穏やかな声だけが存在する唯一つの音だった。
「良い事なんてこれから作っていけばいいんだ。人生に遅すぎるなんて事はない」
乗せられた手の重みが心地よくて、厚い掌の温もりが気持ちよくて涙が滲む。
決して泣くまいと思った。
人の優しさに溺れるなんて弱い人間のする事だと思っていた。
少なくとも俺の住んでいた世界ではそうだった。
だが小さい子にするようにくしゃくしゃと俺の髪をかき回す手が、
分厚くゴツイ暖かな掌が心強くて懐かしくて、優しく心の中に沁み込んでくる。
あの日呑んだ『あいぼん』のように。
「ムショを出たら会いに来い。そん時ゃ二人で飲もうじゃないか。ええ?おい」
親しげにかけられた声は遠いあの日々を思い出させる。
街へと向う車の中で俺は声をあげて泣いた。
俺には頼れる仲間がいて『あいぼん』がある
それが嬉しくて馬鹿みたいに泣いた。
誰かがスイッチを入れたカーラジオから懐かしい歌が聞こえた。
街はもうすぐそこだった。
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